日月潭のほとりに立つ高級ホテル「涵碧樓」

来る8月、静岡県の西部にあり、浜松市と湖西市にまたがる「浜名湖」(はまなこ)と、台湾・台湾南投県魚池郷にある、台湾でもっとも大きな湖「日月譚」(じつげつたん)が交流協定を締結するという。中日新聞が伝えているので下記に紹介するとともに、心からお祝い申し上げたい。

実は、いまから29年前の1987年(昭和62年)11月4日に秋田県仙北市の田沢湖と高雄市の澄清湖が姉妹湖を結んでいて、浜名湖と日月譚は2件目となる。

1987年といえば、日台が国交を断絶してから15年目にあたり、1949年5月20日から台湾に布かれていた戒厳令がこの年の7月15日に38年を経て解除された年。この時点で、日台間の姉妹都市提携は青森県大間町と雲林県の虎尾鎮(1979年10月10日締結)は3件のみで、台湾側からの要望があっても中国による妨害工作などでなかなか伸展しなかった。

当時、日台間の提携について相談を受けていた外交評論家の加瀬英明氏(現在、本会副会長)は、湖同士なら中国も文句をつけにくいだろうと提案、田沢湖と澄清湖の姉妹湖締結となったという経緯がある。

その後、2003年(平成15年)4月に岡山市の市長だった萩原誠司氏(現在、岡山県美作[みまさか]市長、本会理事)が中国からの圧力を跳ね返して台湾の新竹市と友好交流都市を提携したころから徐々に日台間の姉妹都市提携が増えはじめる。

本会メールマガジン「日台共栄」誌上などで何度もお伝えしているように、自治体ばかりでなく、鉄道、温泉、山、棚田、動物園、博物館、図書館、通信社、教育委員会、スキー連盟などさまざまな分野での提携が網の目のように広がっている。

日月譚といえば、瀬戸内しまなみ海道と台湾の日月潭サイクリングコースが一昨年(2014年)10月25日、日台初となる姉妹自転車道協定を締結したことも未だ記憶に新しい。

なお、中日新聞の記事では日月潭に「にちげつたん」と読み仮名をふっているが、台湾の地名に精通する片倉佳史氏はその著『古写真が語る台湾』で「じつげつたん」と読み仮名をふっている。

最近はどの観光案内書も「にちげつたん」としているが、幕末、官軍の錦の御旗は別名「日月の旗」(じつげつのはた)であり、広辞苑にも「日月」は「じつげつ」とはあるが「にちげつ」はない。台湾の日本統治時代に出版された安倍明義著『台湾地名研究』(昭和13年刊)でも「じつげつたん」とある。

ささいなことではあるが、最近、「きいるん」と読む基隆を「きりゅう」と読んではばからない光景を目にした。どうにも違和感を覚えて仕方がなかった。基隆は「きーるん」でもない。片倉氏も「きいるん」と振り仮名をつけている。日月譚の場合はすでに「にちげつたん」という呼び名が定着した感はあるものの、台湾の地名を日本語読みする場合、あいなるべくは日本統治時代の読み方でいきたいものだ。


浜名湖と台湾の日月潭 交流協定締結へ

【中日新聞:2016年6月11日】

浜松、湖西両市と観光協会などでつくる浜名湖観光圏整備推進協議会(会長・鈴木康友浜松市長)と、台湾南投県の観光産業連盟が8月、観光振興に向けた連携を深めるため、交流協定を結ぶことになった。浜名湖と、台湾中部の南投県にある湖「日月潭(にちげつたん)」を懸け橋としたインバウンド(外国人旅行客誘致)で相互協力し、交流人口の拡大や地域経済の活性化につなげる。

日月潭は、台湾三大観光地の一つで最大の淡水湖。風光明媚(めいび)な景観や遊覧船、ロープウエーを備え、浜名湖と類似点が多い。互いに湖の魅力を生かしてプロモーション活動したり、民間交流を促進したりする。

浜松市の2015年の外国人宿泊者数は約37万人で、前年より2倍近く伸びている。そのうち台湾は7600人余と、中国、マレーシアに次いで3番目だった。

浜名湖は、東京や京都、大阪をつなぐ観光コース「ゴールデンルート」のほぼ中央に位置するが、海外での知名度はまだ低い。一方、日月潭は、最も多かった中国人観光客が減少傾向とされ、交流協定で新たな観光誘客に弾みをつけようと両者の思惑が一致したとみられる。