高雄市の「市政新聞」より

秋田県の佐竹敬久(さたけ・のりひさ)知事は、8月23日に「東北観光推進機構」(会長・清野智JR東日本会長)が主催する「台湾・日本東北 交流懇談会2016」に参加するため8月22日から4泊5日で訪台、25日に高雄市の陳菊市長を訪問し、観光や教育、文化、農業などの分野で幅広く、末永く交流を続けていこうとする内容の「国際交流協力覚書」を締結しました。

秋田県ではこれまで、北秋田郡の上小阿仁村(かみこあにむら)が屏東県萬巒郷(ばんらんごう)と1991年10月に姉妹都市を結び、その10年後の2001年7月に仙北郡の美郷町(みさとちょう)が花蓮県瑞穂郷(みずほごう)と「友好町郷提携に関する協定書」を締結しているものの、県が台湾の自治体と都市間提携を結ぶのは初めてのことです。

地元TV局の秋田放送が高雄市と交流拡大のための覚書を結ぶと報じていましたので、続報を待っていたところ、交流協会高雄事務所から高雄市の「市政新聞」が報じているとご連絡いただきました。

8月9日の千葉県と桃園市の「友好交流協定」に続く快挙です。地元メディアでも全国メディアでもまだこのニュースを確認できていませんので、写真4枚を掲載して締結の模様を詳しく伝えている高雄市「市政新聞」の記事を下記にご紹介するとともに、心からお祝い申し上げます。

本会の調査によれば、日台の都市間提携は1979年10月の青森県大間町と雲林県虎尾鎮の姉妹町を締結してからの38年間で、秋田県と高雄市で53件目。著しい特徴は東日本大震災以降に35件、つまり66%にものぼる都市間提携が結ばれていることです。

もう一つの特徴は、日本の自治体の都市間提携が中国や韓国から台湾に移行していることです。

例えば、熊本県と熊本市は2013年10月に高雄市と「国際交流促進覚書」を結びましたが、それまでの熊本県は上海に事務所を開設するなど、中国や韓国との交流に重点を置いていました。しかし、高雄市の陳菊市長が熊本県を訪問したことをきっかけに都市間提携を結ぶ前後から、台湾への修学旅行も増え、台湾からの観光客も増えるなど、交流の重点は台湾に移って来ています。

その熊本を地震が襲ったのは今年4月。6月10日には、高雄市の陳菊市長と台南市の頼清徳市長が熊本を訪れ、熊本地震への義援金として約2億1,600万円を贈ったことは記憶に新しいことです。

実は、秋田県も熊本県とよく似ているようです。まず、秋田県と台湾の主な交流史を下記に列記してみます。

・1987年11月04日 仙北市の田沢湖と高雄市の澄清湖が姉妹湖を締結
・1991年10月03日 上小阿仁村と屏東県萬巒郷が姉妹都市を締結
・2001年07月09日 美郷町と花蓮県瑞穂郷が友好町を締結
・2001年08月16日 ワールドゲームス秋田大会の開会式に高雄市副市長らが参加
・2010年06月    佐竹知事がチャーター便誘客のため訪台(以後、毎年訪台)。
・2011年08月19日 玉川温泉と北投温泉が温泉姉妹協定を締結
・2013年10月24日 秋田銀行と中国信託ホールディングが業務提携に関する覚書を締結
・2014年04月30日 秋田の鳥海山ろく線が平渓線(台湾鉄道)と姉妹鉄道協定を締結
・2014年08月19日 秋田県スキー連盟と台湾スキー協会が友好協定を締結
・2015年08月21日 秋田県と台日産業連携推進オフィスが産業連携に関する覚書を締結
・2015年10月14日 角館高校と国立台湾師範大学附属高級中学が姉妹校を提携
・2016年10月    秋田銀行が初の海外拠点として台湾に台北駐在員事務所を開設予定

秋田県が台湾との交流に本腰を入れたのは、秋田市長だった佐竹氏が知事に当選した2009年以後であることが分かるかと思います。

秋田県はそれまで1982年8月に中国の甘粛省と友好協力を提携したことを嚆矢として、「友好交流に関する合意書」(2010年9月)を締結した天津市や吉林省と交流を深め、今も交流は盛んなようです。

また土地柄を反映して、2010年3月にロシアの沿海地方と包括的友好協定を結び、ウラジオストクやハバロフスク地方との交流も行っています。

秋田県にとってもっとも近い外国となる韓国との交流も盛んで、2001年10月に国際定期航路が開設され、翌年11月に秋田県がソウル事務所を開設されたことで、青少年交流や文化交流を中心として活発に行われています。東南アジアではタイやインドネシア、ベトナムなどとも交流しています。

台湾とは、近年になってチャーター便誘客を目的とした交流が本格化し、このたびの「国際交流協力覚書」の締結に至っています。

交流のためには何といっても「足」の確保がポイントとなりますので、定期チャーター便が台湾との間で成立するかどうかが鍵を握っているようです。

熊本空港と台湾・高雄空港との間に定期便が就航したのは、高雄市と「国際交流促進覚書」を結んでから2年後の昨年10月。秋田県はまだチャーター便の段階ですから、定期便就航まではまだ時間がかかりそうです。

ただ、台湾の高校と姉妹校を締結した角館高校はすでに台湾への修学旅行を実施しています。千葉県の森田健作知事が目指しているように、日台双方の修学旅行(教育旅行)が頻繁に行われるようになれば、チャーター便就航問題もほどなく解決するのではないでしょうか。高校生の修学旅行は県教育委員会の管掌です。広島県や徳島県では、台湾の教育委員会と協定を結んで台湾への修学旅行を強力にバックアップしています。秋田県にはぜひ参考にしていただきたい先例です。