先日、本会HPや本会メールマガジン『日台共栄』誌上で、渡辺利夫会長が9月5日付けで、金田法務大臣に「台湾出身者の戸籍表記是正を求める要望書」と第12期の署名を送達したことをお伝えしたとき、蓮舫議員の二重国籍問題に触れ、下記のように説明しました。
<蓮舫議員もメディアも「台湾籍」や「台湾の『国籍法』」(産経新聞)などと表現し、果ては「中国法に基づけば」(朝日新聞)という説明をしていて、台湾があたかも中国であるかのような表現がなされ、読者をミスリードしています。
その原因はメディアの認識不足にもよりますが、最大の原因は、戸籍を管掌する法務省民事局がいまだに台湾出身者を「中国人」扱いしていることにあります。>
「中国法に基づけば」と報じたのは朝日新聞だけではなく、時事通信も「日本政府の見解では、日本は台湾と国交がないため、台湾籍の人には中国の法律が適用される。中国の国籍法では……」と伝えていました。
日本政府の中で戸籍を管掌しているのは法務省民事局です。法務省民事局に確認したところによりますと、現在の戸籍表記によれば、帰化や婚姻、養子縁組などによってその身分に変動があった場合、台湾出身者の国籍は「中国」と表記されますので、朝日新聞と時事通信の記事は「正確な記事」だという返答でした。ですから、まさに台湾人を中国人としているのが、現在の日本の戸籍なのです。
一方、9月8日付の日刊スポーツが、リオオリンピックの卓球女子団体で銅メダルに輝いた福原愛選手が、卓球の台湾代表の江宏傑選手と今月上旬に都内で婚姻届を提出していたことを報じましたが、下記に紹介する「J-CASTニュース」ように、福原選手夫婦の国籍問題にも注目が集まっているそうです。
日本人が台湾人と結婚しますと、まず新たな戸籍を作ることになります。その戸籍にはどのような身分の変動があったかを記す「身分事項」欄があり、生まれたことを記す「出生」欄と、結婚の場合は「婚姻」欄があります。この「婚姻」欄にはどのようなことが記されるのかと言いますと、下記の7つの項目です。
・婚姻日
・配偶者氏名
・配偶者の国籍
・配偶者の生年月日
・婚姻の方式
・証書提出日
・従前戸籍
つまり、福原選手の夫の江宏傑選手は台湾人ですから、「配偶者の国籍」は「中国」と表記されます。
少し歴史をさかのぼってみますと、そもそも台湾出身者を「中国」と表記するようになったのは、昭和27年4月28日に制定された「外国人登録法」(2012年7月に廃止)に基づいています。この法律によって、日本は台湾出身者を中華民国(中国)の国民とみなし、その国籍を「中国」と表記するようになりました。
ところが、昭和30年代後半(1960年以降)になり、中華人民共和国の出身者から「中国本土で出生又は死亡した者についての出生又は死亡の場所の戸籍記載を、 『中華人民共和国……』と記載するよう強く希望する」声が高まり、これに対して法務省民事局は「中国本土及び台湾を区別することなくすべて『中国』と記載するのが適当」として、昭和39年(1964年)6月19日に局長通達として「中華民国の国籍の表示を『中国』と記載することについて」を出します。
それ以来、52年。通達当時は国交があった中華民国とは昭和47年(1972年)9月に国交が断絶しましたが、それでもこの民事局長通達の内容は変わることなく、現在も厳然と生き続けています。
ですから、帰化した蓮舫議員の戸籍の「出生地」欄は「中国台湾省」と記され、福原選手の戸籍の「配偶者の国籍」欄には「中国」と記されるという次第です。繰り返しますが、日本の戸籍では台湾人は中国人にされている実情なのです。
そこで本会は、平成22年(2010年)9月、台湾人女性と結婚したある日本人男性から妻の戸籍の国籍を「中国」にされたといって相談を受けたことをきっかけに、2010年11月から台湾出身者の戸籍の国籍が「中国」とされている問題の解決に取り組んでいます。
本会HPや本会メールマガジン『日台共栄』誌上で何度も繰り返し述べているように、法務省入国管理局が管掌する外国人の「在留カード」や、総務省が管掌する「外国人住民基本台帳」では、すでに台湾出身者は「台湾」と表記されています。
また法務省自身も、統計ではすでに台湾と中国を区別して発表しています。例えば「国籍・地域別 在留資格(在留目的)別 在留外国人」という統計を見ますと、教授、芸術、宗教、報道など24の在留資格(在留目的)別に、「アラブ首長国連邦」「中国」「台湾」「韓国」などと表示し、それぞれの在留人数を発表しています。
このような現状にもかかわらず、未だに法務省民事局が管掌する戸籍だけが、台湾出身者を「中国」と表記しているのです。
台湾は、これまで一度たりとも中華人民共和国の統治を受けたことはなく、台湾を中国領土とするのは、台湾侵略を正当化するための中国の政治宣伝以外のなにものでもありません。これを放置しておくことは、中国の覇権主義的主張を受け入れているとみなされかねません。
また、台湾出身者の尊厳と人権を守り、在留カードや外国人住民基本台帳との整合性、入国管理局と民事局の整合性、法務省統計との整合性を図るためにも、このような異常な状態は一刻も早く改められなければならないと考えています。
これまで本会では署名活動を展開し、要望書を法務大臣に届けてきました。改正のためには、多くの方の声を法務大臣に届ける必要があります。ご賛同いただけるようでしたら、署名にご協力のほどお願い致します。
本会ホームページには、先に挙げた「法務省民事局長通達」の原文をはじめ、国籍欄に中国と記載された戸籍の例として、婚姻と帰化の戸籍の実例(個人事項証明と全部事項証明)を掲載しています。ぜひ実情をご覧ください。
◆【戸籍問題】 本会のネット署名にご協力を!【第13期:9月1日~12月31日】
*署名に国籍制限はありません。誰でも、世界中どこからでも署名できます。
福原愛選手の結婚で「どうなる国籍」 台湾の夫と「2人とも変更せず」は法律的に…
【J-CASTニュース:2016年9月8日】
リオ五輪の卓球女子団体で銅メダルを獲得した福原愛選手(27)が、台湾代表の江宏傑選手(27)と結婚していたことが報じられた。民進党の代表選で蓮舫代表代行の「二重国籍」疑惑問題が取りざたされる中ということもあってか、福原さん夫婦の国籍問題にも注目が集まっている。
福原選手は、日本代表として競技生活の続行を望んでいるとされる。一方、台湾メディアは日本の報道を引用しつつ、続々と「台湾の妻」などと伝えている。江選手がすでに台湾に新居を購入したという報道もある。
◆婚姻届を提出しただけでは国籍は変わらない
福原選手と江選手は16年4月に交際を公表。リオ五輪の開会式ではツーショットも目撃されたが、五輪期間中には自らの口から交際が語られることはなかった。
五輪閉幕から半月が経った9月8日、日刊スポーツが2人の結婚をスクープ。その後、NHKや毎日新聞(電子版)なども報じた。日刊スポーツ記事などによると、2人は9月上旬、東京都内の区役所に婚姻届を提出したといい、
“「すぐに同居はせず、国籍もお互いにそのままで、別姓の予定」「今後は妻として現役を続行する予定」などと報じている。
なお、婚姻届を提出しただけでは国籍は変わらない。法務省ウェブサイト上の「国際結婚、海外での出生等に関する戸籍Q&A」では、日本人の「鈴木あゆ美」さんが外国人の「カルロス・ジョーダン」さんと結婚したケースを取り上げている。このケースでは、(1)鈴木さんの戸籍がどうなるのか(2)夫の氏(ジョーダン)に変えられるかを質問しており、それぞれ
“「日本人が外国人と婚姻をした場合には、外国人についての戸籍は作られませんが、配偶者である日本人の戸籍に、その外国人(氏名・生年月日・国籍)と婚姻した事実が記載されます。この場合、その日本人が戸籍の筆頭に記載された者でないときはその者につき新戸籍が編製されます」
「外国人と婚姻しても日本人の氏は当然には変わりません。しかし、外国人の氏を名のりたい場合には、婚姻の日から6か月以内であれば、戸籍届出窓口に氏の変更の届出をするだけで、外国人配偶者の氏に変更することができます」と説明している。
今回、台湾メディアは日刊スポーツの記事を引用しながら、「福原愛が台湾の妻になった」などと報道。台湾の民放「民視」(FTV)は、江選手が
“「すでに台南に家を購入しており、結婚後に住む新居の準備をしている」と、さらに踏み込んだ。
福原選手は9月8日朝にブログを更新したが、掲載されたのはパラリンピックの選手に対する応援メッセージ。結婚については触れられなかったが、コメント欄には祝福の声が相次いでいる。福原選手のマネジメント事務所担当者は、
“「現時点でのコメントは差し控えたいと思います。後日改めてお話しします」としている。