報道されているように、民進党代表代行の蓮舫・参議院議員は昨日、日本国籍取得後も中華民国籍が残っていたことを認めた。
読売新聞は本日(9月14日付)の社説で「国会議員が自らの国籍を正確に把握できていないとは、あまりにお粗末」「外交・安全保障などの国益を担う国会議員が、自身の国籍を曖昧にしておくことは論外」と手厳しく批判した(下記)。
蓮舫議員は昨日、前原誠司議員、玉木雄一郎議員の2人の代表候補とともにテレビ番組に生出演し「『あらためて籍を抜く作業をしているので、この手続きが終わったらこの問題は終わります』と述べた」(スポニチアネックス)と報じられている。
しかし、まだこの問題は終わりではない。なぜなら、いまだに蓮舫議員は事実誤認を含む自らの問題発言を訂正していないからだ。
まず、国籍がいつから「中国」と表記されるようになったかの発言である。
例えば、朝日新聞台北支局長をつとめたジャーナリストの野嶋剛氏がインタビュアーをつとめたYahoo!ニュース編集部の単独インタビューで、蓮舫議員は「(日本と中華民国が断交した)1972年以降は、国籍の表記としては『中国籍』となっていました」と答えている。
しかし、日本の国籍で台湾(中華民国)出身者が「中国」と表記されるようになったのは「(日本と中華民国が断交した)1972年以降」ではない。1952年(昭和27年)4月28日以降だ。
この日、日本は華民国と「日華平和条約」に署名し、この7時間半後にサンフランシスコ講和条約が発効する。また同時に日本は、「外国人登録令」(昭和22年公布・施行)を廃止して「外国人登録法」を制定し、台湾出身者を中華民国(中国)の国民とみなして国籍を「中国」と表記するようになった。
1969年6月以降は、中華人民共和国出身者も「中国」と表記されるようになり、現在に至っている。1972年の日本と中華民国の断交は、戸籍表記となんら関係ない。蓮舫議員の事実誤認と言ってよい。
次は、「(日本と中華民国が断交した)1972年以降、私の国籍は形式上『中国』。中国の国内法では外国籍を取得した者は自動的に(中国籍を)喪失をしているので、二重国籍にはならない」と述べていたことだ。
いったい蓮舫議員の言う「中国」とはどこなのだろう。中華民国なのか中華人民共和国なのか。
13日付の時事通信は「台湾の『国籍法』は、台湾籍を放棄するには台湾当局の許可を必要としているが、蓮舫氏はこの手続きを取っていなかった。一方、中国の国籍法は、外国籍取得の時点で自動的に中国籍を失うと定めており、中国の法律に従えば二重国籍の問題は生じない」と報じている。
つまり、蓮舫議員の言う「中国」とは中華人民共和国を指しているのは明らかだ。台湾出身者には中華人民共和国の法律が適用されると発言したことになる。しかし蓮舫議員は、それにもかかわらず台湾の代表処において「中華民国」籍を放棄する手続きを取っている。自動的に「中国」籍を喪失するという認識なら、なぜ中華民国籍放棄の手続きを取ったのか。単なる「念のため」だったとは思えない。
だから、「私の国籍は形式上『中国』。中国の国内法では外国籍を取得した者は自動的に(中国籍を)喪失をしているので、二重国籍にはならない」という発言は、「私の国籍は『中国』。中華民国の『国籍法』は、中華民国籍を放棄するには中華民国当局の許可を必要としているので、その手続きを取った」と訂正されるべきなのではないか。
さらに蓮舫議員は、2004年の参議院選挙の選挙公報に「台湾籍から帰化」と記したことも問題だ。
蓮舫議員は野嶋氏のインタビューで「1985年の国籍法改正をきっかけに、蓮舫さんは日本国籍を取得した、という理解でいいでしょうか」という問いかけに「そうです。日本の国籍取得です」と明瞭に答えている。産経新聞のインタビューでも同様に答え、帰化したことを否定していた。
今年の参議院選挙のときは「台湾籍から帰化」という記述はしていないが、帰化ではなかったことを否定するなら、参議院選挙の公報を訂正する必要も出てくるのではないか。読売新聞の社説も「公職選挙法に抵触する、との指摘もある」と記す。
このように、中華民国籍を放棄する手続きが終わったら、蓮舫議員の国籍問題が終わるわけではない。
蓮舫氏の台湾籍 「二重国籍」への認識が甘い
【読売新聞:2016年9月14日「社説」】
国会議員が自らの国籍を正確に把握できていないとは、あまりにお粗末と言うほかない。
民進党の蓮舫代表代行が記者会見し、台湾籍を保有していたことを認めた。台湾は父親の出身地だ。
蓮舫氏はこれまで、1985年1月に日本国籍を取得した際、台湾籍を放棄した、と説明してきた。党代表選への出馬後、二重保有ではないかとの指摘を受けて、台湾側に確認し、判明したという。
結果的に、30年超も不正常な状態を放置してきたことになる。蓮舫氏は「私の記憶の不正確さによって様々な混乱を招いた」と陳謝し、改めて放棄手続きを進めるというが、遅きに失した対応だ。
日本政府は「二重国籍」を認めていない。国籍法で、原則22歳までに、自らの国籍を選択しなければならない、と定めている。
外国籍保有者が国会議員になることを排除する規定はないが、外交官への採用は禁止されている。外交・安全保障などの国益を担う国会議員が、自身の国籍を曖昧にしておくことは論外である。
蓮舫氏は、17歳当時、台湾の大使館に当たる台北駐日経済文化代表処で行ったとされる放棄手続きの完了を確認しなかった。2004年参院選の出馬時にも、その作業を怠った。政治家として認識が甘く、資質が問われよう。
台湾は親日的とはいえ、尖閣諸島の領有権を主張するなど、日本の立場と相反する問題もある。台湾籍があれば、台湾との関係であらぬ疑念を招きかねない。
見過ごせないのは、蓮舫氏の説明が二転三転したことだ。
当初は「台湾籍は抜いた」と断言し、「うわさの流布は本当に悲しい」と不快感さえ示した。その後、手続きをした年齢が18歳から17歳に変わったり、台湾籍保有に言及した約20年前の雑誌インタビューが発覚したりした。
参院選の公報に「台湾籍から帰化」と記したことが公職選挙法に抵触する、との指摘もある。
蓮舫氏は「違法性はない」として、代表選から撤退しない考えを強調した。事実関係をより明確にし、説明責任を果たすべきだ。
岡田代表は、「父が台湾人だからおかしいという発想が一連の騒ぎにあるとすると、極めて不健全なことだ」と主張している。
民進党内に、蓮舫氏への批判が民族差別であるかのような曲解があるのは理解に苦しむ。問題にされているのは、あくまで蓮舫氏が法に基づく手続きを適切に行っていなかったことだからだ。