9月30日、群馬県伊勢崎市議会の9月定例会において「台湾出身者の戸籍表記是正を求める意見書」を賛成多数で可決した。
この意見書を提出したのは「伊勢崎のジャンヌダルク」こと伊藤純子議員(伊勢崎市議会「正論の会」会長)。7月末に行われた李登輝元総統の石垣講演会で柿沼貴志氏(前行田市議)と一緒に司会をつとめていて、台湾にも関心が深い。
10月1日付の地元紙「上毛新聞」も1面真ん中に「戸籍の『台湾』表記認めて 伊勢崎市議会が意見書案可決」との見出しを掲げ、囲み記事で報じている。
伊藤市議は10月2日のブログで、意見書の全文を紹介しつつ、可決について「ほとんどの市議は賛成の意思表示をしてくださいました。これは本当に嬉しかったです。なかには賛成の意志を示しつつ、『外交問題に発展しないか』など、慎重な意見もありましたが、共産党議員団(2名)の反対だけで、意見書は圧倒的多数で可決に至りました」と報告している。下記にその全文をご紹介したい。
同様の意見書は、これまで石川県議会(平成24年10月2日)、宮城県議会(平成24年10月11日)、柏崎市議会(平成28年3月25日)、鎌倉市議会(平成28年6月30日)で可決しており、伊勢崎市議会で5番目の意見書可決となった。
ちなみに上毛新聞は、25年前に日本に帰化したという、「群馬県台湾総会」(頌彦真賢会長)の事務局長をつとめる頌彦守眞(うたさと・もりみ)さんの「自分の出身は台湾であり、中国人と書かれるとアイデンティティーが傷ついた気分になる。意見書は大きな一歩。敬意を表したい」というコメントを伝えている。偽らざる台湾出身者の声であろう。
台湾と中国をめぐる状況や日本政府の台湾に対する姿勢が明らかに変わってきているにもかかわらず、50年以上も前、1964年の東京オリンピックの年に出された一片の法務省民事局長通達で、台湾出身者は未だに「中国人」にさせられている。
これもまた、日本が「戦後レジーム」から脱却するための試練の一つであり、台湾出身者の尊厳と人権を守り、行政の怠慢を改めるためにも、必ずや法務省民事局長通達を出し直させるよう努めていきたい。
台湾出身者が「中国」とされている戸籍問題の詳細については、本会ホームページに掲載しています。伊藤市議のホームページとともに下記に掲載します。
◆伊藤純子市議ホームページ
◆台湾出身者が「中国」とされている戸籍問題の解決を!【本会ホームページ】
台湾出身者の戸籍表記是正を求める意見書」可決へ
【「伊勢崎のジャンヌダルク」 伊藤純子の活動報告:2016年10月2日】
伊藤純子です。去る9月30日、約1カ月にわたって開会された伊勢崎市議会定例会(9月議会)が閉会いたしました。今回は、一般質問、決算委員会、常任委員会(経済市民)、そして世界遺産特別委員会など出番が多く、議会人として、とても充実した定例会だったと振り返ります。その中で特に印象に残ったことは、私が上程した意見書が、賛成多数で可決したこと。本日は、上程した意見書とその内容についてお話ししたいと存じます。
まず「意見書」とは、地方自治法第99条において、地方公共団体の公益にかかわる事柄に関して、議会の議決に基づき、議会としての意見や希望を意見書として内閣総理大臣、国会、関係行政庁に提出できることとされるもの。伊勢崎市議会でも、各定例会に会派単位で意見書案を提案、議会運営委員会での協議を経て、議員発議で提案し、採択されます。
また、市民等から意見書提出を求める請願が提出されることもあります。これについては請願の例により取り扱い、採択された場合は、議員発議で意見書を提案し、採択することになります。なお、意見書には法的拘束力はありませんが、住民代表である議会の総意として尊重されます。
そこで、私が上程した意見書は下記のとおりですので、ご面倒でも一読を願います。
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台湾出身者の戸籍表記是正を求める意見書
台湾出身者が日本人と結婚、あるいは帰化するなど、その身分に変動があった場合、戸籍における国籍や出生地は「台湾」ではなく「中国」もしくは「中国台湾省」と表記されている。伊勢崎市においても台湾出身者を「中国」と表記、手続きの際に担当者が台湾出身者に対して説明をし、一定の理解を求めている状況である。
中国とは中華人民共和国のことであり、中国台湾省とは中華人民共和国の行政区を指す。しかし、台湾がこれまで一度たりとも中華人民共和国に統治を受けた史実はなく、これは台湾出身者の尊厳、人権にかかわる重要な問題である。
そもそも戸籍において台湾出身者を「中国」としたのは、東京オリンピックが開催された昭和39年6月19日付で出された「中華民国の国籍表示を『中国』と記載することについて」という法務省民事局長通達が根拠となっている(参議院平成23年8月19日答弁書256号)。
昭和47年、中国と日本の国交を樹立した際、中華民国(当時の台湾)と断交したものの、平成17年から日本と台湾との間で観光客に対するビザ免除を恒久化、また平成19年には運転免許証の相互承認を行っているが、中国とはいまだ行われていない。東京都は平成20年5月、台湾からの転入、転出の際の住民基本台帳の表記について、「現状に即さず、正確ではない」との判断から「台湾」表記を認める通知を出している。
平成24年7月、これまでの外国人登録証明書を廃止し、新たな在留カード制度に移行された際には、「国籍・地域」欄を設け、台湾出身者は「中国」ではなく「台湾」と表記されている。同時に実施された外国人住民基本台帳においても台湾出身者の「国籍・地域」は「台湾」と表記されるようになった。つまり、同じ法務省内の在留カードや外国人住民基本台帳と、戸籍の国籍欄の整合性がとれていない。
よって、下記の事項の実現するよう、日本政府に強く求める。
1 戸籍の国籍欄および出生地欄を「国籍・地域」と改め、台湾出身者を「中国」ではなく、「台湾」と表記するよう、早急に新たな民事局長通達を出すこと。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
簡潔に申し上げますと、平成24年7月9日から、日本に在留する外国人の新しい在留管理制度が始まり、在留カードと住民票は「台湾」と表記されるようになったものの、戸籍についてはなぜ、「台湾」と表記されないのか、と言うことです。
この問題については、かねてより、伊勢崎市に在住する台湾出身者がこの問題に直面し、非常に残念な思いをしている、と伺っておりましたので、いつ上程しようか、タイミングを見計らっておりました。8月に行われた石垣市での「戸籍表記に関する研修会」に出席したこと、また、卓球の福原愛選手が台湾男性との成婚直後と言った、おめでたいムードが冷めないうちに、どうしても上程したかった思いがありました。
これに対し、ほとんどの市議は賛成の意思表示をしてくださいました。これは本当に嬉しかったです。なかには賛成の意志を示しつつ、「外交問題に発展しないか」など、慎重な意見もありましたが、共産党議員団(2名)の反対だけで、意見書は圧倒的多数で可決に至りました。
県内でも初の意見書提出で、全国的にも石川県議会、柏崎市議会、そして鎌倉市議会など、まだまだごく少数の議会のみ可決されている状況であります。台湾出身者の尊厳、人権にかかわる重要な問題であることから、多くの地方議会でこの意見書が可決されることを切に願うばかりであります。