9月21日、成田空港に到着した飛虎将軍の神像(関係者提供)

南部の台南市で祭られている旧海軍の杉浦茂峰兵曹長(死後、少尉)の神像が先月、故郷の水戸市に“里帰り”した際の取材は、思えば偶然の連続だった。

日本人の夢枕での「お告げ」がきっかけという計画を知ったのは、出発の2日前。知人の台湾の雑誌記者と話していて、ふと「ゼロ戦のパイロットの像が日本に行くらしい。一緒に見に行く?」と誘われた。何かと思ったが「飛虎将軍廟(びょう)」と聞いて事情が分かった。

ちょうど予定していた台南市の頼清徳市長への取材の翌日だという。廟に問い合わせると、電話口の声は「詳細は分からない」。そういえば、杉浦氏を題材に青春小説を書いた豊田美加さんの連絡先がなかったっけ、と日頃の整頓の悪さを呪いながら名刺の山を半分に割ったところ、一番上に目当ての名刺が乗っていて鳥肌が立った。そこからは話が順調に進んだが、肝心の雑誌記者は用事で来られなかった。

関係者の思いだけでなく、中華航空の対応にも心を打たれた。日本の航空会社は、神像は「貨物室で」と客室への持ち込みを断ったが、中華航空は座席の手配に応じた。1人分の代金を払い、同行者と同じエコノミークラスだったという。搭乗者名簿に何と書くのかな、と頭に浮かんだ疑問は、やぼなので問い合わせなかった。(田中靖人)