電話会談を伝える産経新聞夕刊(12月3日付)

台湾の蔡英文・総統が12月2日に電話でトランプ次期米国大統領と10分以上にわたって電話で会談したことについて、多くの報道が出た。その中でも、会談をセットしたのが「ヘリテージ財団に所属しトランプ氏の政権移行チームの助言役を務めるスティーブン・イエーツ氏」と、具体的な名前まで挙げて報じていたのが「CNNニュース」だった。下記にご紹介したい。

なお、電話会談後、ペンス次期米副大統領は4日のNBCテレビで「儀礼的な電話であり、民主的に選ばれた台湾総統が次期大統領に祝意を伝えるために電話したものだ」(時事通信社)と述べたと報じられた。

中国の抗議をなだめるかのように受け取られる発言だが「民主的に選ばれた台湾総統」という表現が含みを持たせている。「民主的に選ばれた台湾総統」が「民主的に選ばれた米国の次期大統領」に祝意を伝えたのは何も問題ないとも言っているようにも受け止められ、中国を牽制しているようにも受け取られるからだ。

このペンス次期米副大統領の発言は、民進党が3日に「蔡総統がトランプ氏の当選を祝い、台米関係の進展に期待を示したことは『正常な祝福に属する』」(中央通信社)と表明したこととも符節が合う。

民進党はまた米国に抗議した中国に対して「平常心で見てほしい」と呼びかけたそうで、これもまたペンス次期米副大統領の「儀礼的な電話」という発言と符合しているように思われる。

蔡英文政権とトランプ次期政権がグッと距離を縮めたという印象が強い。

なお、安倍総理は11月18日、世界の首脳にさきがけてトランプ氏を訪問して直接会談したが、現時点で安倍総理以外にトランプ氏と直接会って会談した首脳はいない。


トランプ氏、台湾総統と電話会談 対中関係に影響も

【CNNニュース:2016年12月3日】

蔡英文総統から祝意の電話があったことを伝えるトランプ氏のFacebook

ドナルド・トランプ次期米大統領は2日、台湾の蔡英文(ツァイインウェン)総統と電話で会談した。トランプ氏の政権移行チームが声明で明らかにした。米中間の外交的な緊張が高まる可能性もある。

声明によれば、電話会談では蔡総統がトランプ氏に祝意を伝えた。両者は会談の中で、米台間に経済、政治、安全保障上の緊密なつながりが存在することに言及したという。トランプ氏の側も蔡氏が今年5月に台湾総統に就任したことに祝意を表明したとしている。

米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の中国専門家によれば、米大統領または次期米大統領と台湾総統との間の電話会談が公式に報告されたのは、米政府が1979年に中国政府との間に外交関係を樹立してから初めて。

今回の動きが台湾を自国の一部とみなす中国側を激怒させるのは必至だ。トランプ氏は米国と諸外国との関係に「予測不能性」を持ち込む必要性を公言しており、今回の会談はその最初の主要な兆候となった。

今回の電話会談により、トランプ氏が来年1月20日に大統領に就任する以前から米中関係が急速に悪化する恐れもある。

中国国営の中国中央テレビ局(CCTV)は即座に声明を出し、トランプ氏の動きは「一つの中国原則や、米国と中国本土との間で受け入れられている外交儀礼からの前例のない逸脱」だと評した。中国政府からの反応は現時点でないとしている。そのうえで「中国本土は米政府と台湾当局との間のいかなる公式な接触にも断固として反対すると意向を示している」と伝えた。

トランプ氏は2日夜、短文投稿サイトのツイッターで、台湾当局の側から電話があったと明かした。

米国家安全保障会議(NSC)のネッド・プライス報道官は、中台関係をめぐる米国の長年の政策に変更はないと指摘。「一つの中国」原則に対する揺るぎない姿勢を強調したほか、平和的かつ安定した中台関係を維持することが米国の基本的な国益にかなうとの見方を示した。

別のオバマ政権当局者によれば、電話会談についてホワイトハウスや米国務省への事前の連絡はなかったという。

情報筋によると、保守系シンクタンク、ヘリテージ財団に所属しトランプ氏の政権移行チームの助言役を務めるスティーブン・イエーツ氏が台湾に滞在中で、電話会談を手配したという。イエーツ氏はディック・チェイニー前副大統領のアジア政策顧問を務め、台湾を支持する姿勢が非常に強い。