陳水扁氏が総統に当選して政権交代が行われたのは2000年5月。その翌年12月、財団法人として台湾智庫(台湾シンクタンク)が設立され、これまで台湾智庫叢書を出版し、政策提言や世論調査を実施してきている。日本の岡崎研究所や米国のシンクタンクとの交流も続けている。
12月27日、台湾と国際関係をテーマに「台湾が緊密な関係を保つべき国・地域はどこか」などの世論調査の結果を発表した。中央通信社がその詳細を伝えているので、下記に紹介したい。
「台湾が緊密な関係を保つべき国・地域」の1位は米国(42.1%)、2位は中国(25.8%)、3位は日本(13.7%)となったという。記事には出ていないが、台湾智庫は政党別調査も発表してい
て、これがなかなか興味深い。
・民進党支持者 =1位:米国(60.1%)、2位:日本(18.9%)、3位:中国(7.3%)
・時代力量支持者=1位:米国(46.9%)、2位:日本(24.9%)、3位:中国(17.2%)
・国民党支持者 =1位:中国(50.0%)、2位:米国(28.3%)、3位:日本(18.9%)
また、日本には駐台湾大使館に相当する台北駐日経済文化代表処があるが、この在外公館の名称についての調査結果も興味深い。「変えるべきではない」は21.4%だったが、「台湾代表処に改名すべき」は66.7%にも及んだ。台湾の民意が奈辺にあるかを象徴的に示していると言えようか。
ちなみに、台湾にある日本の在外公館の名称は「交流協会台北事務所」。しかし、この名称ではどこの交流協会なのかよく分からいため頭に「日本」と付して「日本交流協会台北事務所」を通称として使ってきた。しかし、別掲でお伝えしたように、来年1月1日をもってこれまでの「交流協会」から「日本台湾交流協会」に名称を変更する。
台北駐日経済文化代表処の名称も、許世楷代表時代の2004年ころより「台湾代表処」への変更が内々に取り沙汰されるようになっていた。しかし、日本にある大使館など在外公館の名称変更は日本政府の同意を必要とし、日本が難色を示していたという。中国の抗議に対応しなければならないことが大きな理由だったと漏れ聞く。
ここにきて日本が交流協会の名称を変更した。台湾の民意は台湾代表処に改名すべきことを指し示している。台北駐日経済文化代表処の名称変更もにわかに現実味を帯びてきた。
◆2016/12/27 台灣智庫十二月民調記者會 會後新聞稿
42.1%が「米国と緊密な関係を保つべき」=台湾シンクタンク調査
【中央通信社:2016年12月27日】
シンクタンクの台湾智庫は27日、最新の世論調査結果を公表した。それによると、中華民国(台湾)が緊密な関係を保つべき国・地域の1位は米国(42.1%)、2位は中国大陸(25.8%)、3位は日本(13.7%)となったことが分かった。
調査は12月19~20日、20歳以上の市民1072人を対象に実施。台湾智庫世論調査センターの周永鴻主任は、中華民国とサントメ・プリンシペの断交や中国大陸の空母「遼寧」の台湾沖通過など、外交、国防を取り巻く情勢が変わる前に調査を行っているとし、現在実施した場合とは結果が異なる可能性があるとしている。
周主任によると、今年5月に行った調査では、米国が55.6%、日本が19.1%、中国大陸が15.7%だったという。
また、蔡英文総統が今後外遊する際、自身が名乗るべき肩書きについて、49.4%が「台湾総統」と答え、41.2%が「中華民国総統」と答えた。前回比では「台湾総統」の支持者が約1割増えたとしている。
一方、国際機関などのイベント参加時の名称については、51%が「台湾」の使用を支持。34.6%が「中華民国」、9%が「チャイニーズタイペイ(中華台北)」と回答。
「台北経済文化代表処」などの名が付けられている場合が多い在外公館の名称については、66.7%が「台湾代表処」に改名すべきだと答え、「変えるべきではない」の21.4%を大きく上回った。