公益財団法人交流協会が本年1月1日をもって「公益財団日本台湾交流協会」(英語名:Japan-Taiwan Exchange Association)に名称を変更し、大きな反響を呼んだ。
この名称変更問題はすでに1990年代から出ていたと言われるが、沼田幹夫・日本台湾交流協会台北事務所代表によると、昨年初めに台湾で交流協会の認知度を独自調査したところ、「知っている」「意味が分かる」と答えた市民は回答者のわずか14%にとどまり、これを受けて同協会は名称変更の検討を開始。8月ころにはほぼ準備が整い、9月理事会における承認を経て定款を変更し、12月28日に発表という経緯をたどっている。
日本台湾交流協会は1月25日、ホームページに月刊「交流」1月号が発行されたことを公開し、その中で、政治大学日本研究プログラム助理教授の石原忠浩氏が交流協会の名称変更について「台湾内政、日台関係をめぐる動向(2016年10月中旬~2017年1月上旬)で言及している。
石原氏は、1)日台海洋協力対話の開催、2)日本「被災区」食品輸入開放問題、3)第41 回日台貿易経済会議の開催、4)交流協会が日本台湾交流協会に改名、5)米台関係の展開:トランプ氏勝利の余波、6)サントメ・プリンシペが台湾と断交、の6項目についてレポートしていて、ここでは名称変更のレポートをご紹介したい。
というのも、「謝長廷駐日代表は代表処職員に対し、対外的に『台湾駐日代表処』を使っても良いと述べた」ことを紹介しているからだ。
実は1月22日、在日台湾同郷会などがひまわり学生運動を牽引した「時代力量」の黄國昌・主席による「台湾新世代の国家アイデンティティ」と題する感銘深い講演会を開いたが、その懇親会の席上、台北駐日経済文化代表処の郭仲熙・副代表が「これから代表処は『台湾駐日代表処』と言います」と明言、会場から盛大な拍手が沸き起こった。
石原氏は「自由時報」が報じたとしているものの、はからずも副代表が公の席で裏書きしてしまったのだ。
ちなみに、黄國昌・主席の演題「台湾新世代の国家アイデンティティ」には心底驚かされた。これまで台湾をめぐるアイデンティティといえば「台湾人としてのアイデンティティ」、つまり「台湾人か中国人か」を問うものだった。しかし、黄國昌氏は「国家アイデンティティ」を問うた。つまり「愛国心」に言及したのだった。
李登輝総統は当時、「学生らは自分のためでなく国や社会、次世代のために立ち上がった」と高く評価し、この時点で国家アイデンティティの芽生えを指摘されていた。ひまわり学生運動から3年目にして、堂々と台湾の国家アイデンティティに言及する講演が開かれたことの意義は限りなく深い。
許世楷・元台湾駐日代表処代表が提案した「亜東関係協会」と「台北駐日経済文化代表処」の名称変更も、恐らくそれほど遠くない時期に実現するだろう。おおいに期待したい。
台湾内政、日台関係をめぐる動向(2016年10月中旬~2017年1月上旬)
石原忠浩:台湾・政治大学日本研究プログラム助理教授、元(財)交流協会台北事務所専門調査員
【日本台湾交流協会「交流」2017年1 月号(No.910)】
4.交流協会が日本台湾交流協会に改名
12 月28 日、交流協会が2017 年1月1日より、名称を「公益財団法人日本台湾交流協会」に変更する旨発表したことに対し、翌日の台湾主要各紙は「台日断交44 年目にしての突破」(聯合報)、「日本の対台湾窓口機構正名:日本台湾交流協会」(自由時報)など一面トップで報じた。
外交部はプレスリリースで新名称は同協会が台湾における実質的な業務内容を明確に反映しており、台日関係が前向きな方向に発展していることを証明するものとして歓迎の意を表明した。
台湾側の消息筋によると、日本側の今決定の背景には、「交流協会」がどのような組織なのか明白ではいないという意見が強く、「日本台湾交流協会」と改名することで、この組織の性質が一目瞭然になると指摘した。『自由時報』は、外務省関係者の話として、改名の理由として、「日台双方の緊密な交流」、「台湾社会における交流協会の認知度の低さの是正の必要性」などの考えが
あったと報じた。
陳水扁政権時代に駐日代表を務めた許世楷氏はメディアの質問に対し、台湾側の「亜東関係協会」、「台北駐日経済文化代表処」の名称も一緒に変更すべきとの考えを強調した。
『聯合報』は、中国外交部が日本の措置に対して同日の記者会見で強烈な不満を表明したと報じたほか、今回の日本の決定は「米国(美国在台協会)、英国(英国在台弁事処)等の駐台組織の名称に倣ったものであり、一つの中国原則に違反するものではないとの判断があった」と分析した。また、組織改名については、馬政権時代に日本側に提案したことがあったが、実現したのは蔡政権になってからであったとの報道もなされた。
1月11 日付の『自由時報』紙によると日本側の名称変更に呼応したのか、謝長廷駐日代表は代表処職員に対し、対外的に「台湾駐日代表処」を使っても良いと述べたと報じている。