ノンフィクション作家の門田隆将(かどた・りゅうしょう)氏が日本と台湾で『汝、ふたつの故国に殉ず ―台湾で「英雄」となったある日本人の物語』を同時発売したことに伴い、2月27日に台北で、翌28日には台南で講演会を開いた。
本会もこの講演会に合わせ、2月26日から3月1日にかけて「門田隆将先生2・28台湾講演ツアー」を実施し、2・28事件関係の史跡などを訪れるとともに門田氏の講演会に参加。
台北市の講演会は、台湾で出版の『湯徳章 不該被遺忘的正義與勇氣』の版元である玉山社出版が主催し、市長官邸沙龍の表演庁で27日午前10時から行われたが、開会前から200人近くの参加者が押し寄せ、立ち見も出る盛況だった。
日本からは、ジェット日本語学校名誉理事長で評論家の金美齢氏やジャーナリストの福島香織氏、台湾独立建国聯盟日本本部委員長の王明理氏、KADOKAWA代表取締役の井上 伸一郎氏なども駆けつけ、一方、台湾側からは李勝雄氏や顧立雄氏をはじめとする弁護士や王厚康・前台湾独立建国聯盟秘書長なども参加、立錐の余地もないなかで催された。
また、本会ツアー参加者は翌28日、台南市政府が主催し二二八紀年公園において午前9時から開かれた追悼会に門田氏や王明理氏とともに参加し、午後2時から台湾文学館の国際会議庁で開かれた講演会にも参加した。
台南の講演会は台南市台日友好交流協会(郭貞慧・理事長)などが主催、やはり200人ほどが参加、立ち見が出るほどだった。
日本からは金美齢氏や王明理氏、また紀伊国屋書店代表取締役社長の高井昌史氏も駆けつけた。一方の台南側からは、2014年に湯徳章氏命日の3月13日を「正義と勇気の日」と定めた頼清徳市長や、湯徳章氏の銃殺が行われた「民生緑園」の名称を1998年2月28日に「湯徳章紀念公園」に改めた前台南市長で元台湾独立建国聯盟主席の張燦鍙氏なども駆けつけて盛会裡に開催された。
なお、本会のツアーでは27日夜、蔡焜燦氏(台湾歌壇代表)や門田氏、王明理氏、李登輝基金会の早川友久氏なども交えて夕食会を開いた。蔡氏はよほど気分がよかったのか隠し芸の手品まで披露、門田氏はじめ参加者からやんや拍手を浴びるなど有意義で楽しい一夜を過ごした。
下記に門田氏の台北講演会の模様を産経新聞が伝えているのでご紹介したい。
台湾2・28事件70年 「共通の価値観を持つ国々が絆を強めるべき」作家の門田隆将氏が講演
【産経新聞:2017年2月27日】
台湾を接収した中国国民党政権が台湾住民を弾圧した1947年の2・28事件は28日、発生から70年。日本統治時代に日本人の父と台湾人の母との間に台湾で生まれ、後に弁護士となり事件で銃殺された湯(坂井)徳章についての著作「汝、ふたつの故国に殉ず」を出版した作家の門田隆将氏が27日、台北市内で講演した。
門田氏は「彼が守ろうとした人権、民主、自由、正義を維持するため、日本、台湾、米国など共通の価値観を持つ国々が絆を強めるべきだ」と訴えた。また「事件は50年の日本統治を無視しては語れない」とし、法治主義と教育が浸透した台湾の社会と中国大陸から来た人々との対立が背景にあったと指摘した。
また、事件で卒業生ら11人が犠牲になった中央大学の酒井正三郎総長・学長も28日、台北で開かれる追悼式典に参列する。酒井氏は27日に台北で記者会見し、「大学が誇る先達の多くが犠牲になった。哀悼の意を表したい」と述べた。