3月27日、台湾の最大手紙、自由時報(電子版)紙上に張茂森・駐日特派員のコラム「東京観察」が掲載された。安倍政権の対台湾外交と蔡英文政権について論じられているので、本会台北事務所で翻訳し会員各位の参考に供するものである。

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20170329-01赤間二郎・総務副大臣が公務として台湾を訪問した。これは日台断交以来、45年間で初めて副大臣が公的な身分で訪台したものであり、日台関係緊密化のうえで重要な一里塚といえる。今年に入り、日本政府は「交流協会」の名称を「日本台湾交流協会」に改称した。また(日本国内の)民間でも、2020年の東京オリンピックに「Taiwan」の名称での出場を求める運動が広がっている。これは日本が安倍晋三政権のもと、政府や民間にかかわらず、台湾と積極的に友好を深めていこうという姿勢の表れだろう。

しかしながら、台湾政府の態度はおよび腰だ。日本側が勝手に歩み寄っているだけで台湾は無関係だ、とも取れるような態度である。日本がこれほどまでに台湾と近しくなっている時なのに、蔡英文政権はいったいこれ以上何を待っているのだろうか。

安倍政権発足前の、これまでの歴代内閣では、台湾の立法委員や高官らが日本側の国会議員などと面会を希望する場合、まるで世間を憚るかのようにホテルの一室や議員会館での会見がセットされることが多かった。あまつさえ、(日本の)省庁の局長級以上は公務で台湾を訪問することが禁止されていた。2002年、第一次小泉純一郎内閣で外務政務官を務めていた水野賢一・衆議院議員は公務で訪台することが禁止されていることに憤り、外務政務官を辞任して抗議するとともに、「チャイナスクール」に牛耳られた外務省の「媚中」姿勢を批判した。当時、日本政府内で水野氏を唯一支持したのが内閣官房副長官だった安倍晋三だったと聞く。

赤間副大臣の訪台が閣議を経ていなかったことや、「日台交流協会」への名称変更までも、中国はあげつらって「卑劣な行為」と批判する。日本側も当然、副大臣の訪台が中国からの圧力を受けることは織り込み済みだろう。安倍内閣はこれまでずっと台湾を「国家」同様のレベルで遇そうとしてきた。つまり、台湾と中国は別個の存在だとして扱ってきたのである。しかし、台湾の李大維・外交部長(外相)は、自ら矮小化して「台湾と中国の関係は外交関係ではない」などと発言している。李部長は一体どちらの立場の人間なのか。

日本における台湾との交流団体は、ずっと台湾の正名運動を支援してきてくれたが、(オリンピックへの参加名称変更について)台湾政府の腰は重いどころか、これまでどの機関も日本に対して正式に協力を求めてこなかったのが実情だ。林徳福・体育署長(スポーツ庁長官)は「変えようと思って変えられるものではない」とうそぶき「台湾は『中華台北』を受け入れざるを得ないのだ」とぼやく始末だ。これでは完全なる責任の放棄である。やってもいないのになぜ成功しないとわかるのか。仮に不首尾に終わったとしても台湾に損失はないではないか。林署長の「事なかれ主義」に走る官僚発言を耳にしたら、台湾を応援してくれている日本人はきっとガッカリするだろう。

高い支持率に支えられてきた安倍政権は、台湾をひとつの「国家」として遇そうとしてきた。もちろん日本も台湾に期待しているのである。(現在、台湾への輸入が禁止されている)福島をはじめとする地域の食品は、科学的な検査で汚染が検出されないということが証明されたならば、一日も早く解禁すべきである。

安倍政権が永遠に続くわけではない。日台関係がこれほどまでに緊密な時期に、台湾が日本の助けを必要とするなら、あるいは台湾が日本を助けられるのであれば、今すぐにでも着手すべきである。これはまさに千載一遇の好機である。安倍首相の任期が終わればもう二度とこのチャンスが来ることはないだろう。今や日本人でさえも疑問に思っている。「蔡英文はこれ以上何を待っているのか」と。