5月3日、本会代表団が嘉南水利会を訪問し、八田銅像修復募金を寄贈した際に提供された画像。切断された部分、色調ともにほぼ寸分たがわず修復されている

去る4月16日、烏山頭ダムのほとりに佇む八田與一技師の銅像の頭部が切断されるという衝撃的な事件が発覚し、日台双方で大きなニュースとなった。

それから約3週間、八田技師ご夫妻の慰霊祭を目前に控え、修復が完了した八田銅像が公開された。

本日午前9時から、明日の慰霊祭を前に、銅像に再び魂を込めるとともにお祓いをする儀式が行われている。首の部分で切断された銅像だが、見た目はもともとの銅像と遜色なく、収蔵していた半身像の頭部を寄贈した奇美博物館と台南市政府文化局が全力で修復にあたったことが表れている。

実際に修復を手掛けた芸術家の王昭旺氏はメディアのインタビューに答え「修復は順調で、もともとの銅像とほぼ寸分たがわぬ状態に戻せたと自負している」と胸を張った。

修復は、切断された八田銅像の首部分と、奇美博物館が寄贈した頭部を溶接したほか、色調の調整、防水のための塗装などの作業が一週間にわたって行われたという。奇美博物館に収蔵されていた八田技師の半身像は、烏山頭ダムに置かれていた八田銅像をモチーフにして造られたため、表情も大きさも瓜二つだったことが功を奏した。

八田與一技師ご夫妻の慰霊祭は予定通り、8日午後2時から行われる。目下、八田銅像は警察当局と嘉南水利会によって24時間体制で警備されている。


なお、修復された八田銅像の公開に関し、嘉南水利会は5月7日午前のお祓いの儀式以前の公開を控えるよう求めていたにもかかわらず、台湾の最大手紙・自由時報が報道してしまうという残念な出来事がありましたので、その件に関し、本会台北事務所がFacebook上に掲載したコメントを下記に掲載します。

修復された八田與一銅像の画像公開について

【日本李登輝友の会台北事務所Facebook】

台湾の最大手紙「自由時報」が、HP上で修復された八田與一像を公開・報道してしまいました。

5月3日に本会の代表5名が八田與一銅像修復募金の贈呈のため、嘉南水利会を訪問した際にも、修復が完了した銅像の画像を見せていただきました。

そこで私たちが「日本の皆さんも八田銅像がどうなっているか大変心配しているので、この画像をHPで公開してもよろしいか」と伺ったところ、水利会の楊明風会長は「もちろん構わない。どうか日本の皆さんに、八田銅像が無事に修復されたことをお伝えしてほしい」とおっしゃられました。

ただ、楊会長は「もし出来れば」と付け加えて、「5月7日朝9時から、八田銅像に魂を吹き込み、お祓いをする儀式が行われます。これは台湾の伝統的な風習なのです。出来れば、その前に大々的に公開するのは、、、」とおっしゃられました。

私たちは水利会の皆さんがそれほどまでに八田銅像に敬意を持ち、大切に守っていこうという熱い気持ちを改めて感じるとともに、その厳粛な想いを汲み取り、「皆さんのお気持ちを尊重します。7日の朝まではこの画像は公開しません」と約束したのです。

八田銅像の頭部切断事件は台湾でも大きなニュースとなり、その後の修復がどうなっているのかも注目されているのは事実です。
しかし、銅像を何十年にもわたって守り続けて来られた水利会の皆さんの気持ちを踏みにじるような報道の仕方は残念としか思えません。

「ジャーナリストとして、知ってしまった以上、報道しないわけにはいかない」というメディアにとってのみ都合のいい、利己主義を覆い隠す美辞麗句はどうでもよく、ただ単にスクープ合戦を出し抜きたかっただけの商業主義的な報道なのかもしれませんが、こうした報道はただただ残念の一言に尽きます。

ともあれ本会は、長年にわたって嘉南水利会の皆さんが敬い続け、その銅像を文字通り命懸けで守って来られた八田與一技師と同じ日本人として、水利会の方々との約束を守るべく、本会HP上において修復された八田銅像の画像を公開するのは明日(5月7日)午前9時以降といたします。