八田與一技師の命日にあたり、烏山頭ダムの墓前で慰霊祭が開かれる本日、「捍衛中華道統文化工作隊(正統な中華文化を死守する作業隊)」と名乗る団体がFacebook上で、八田與一技師の銅像を切断した容疑者・李承龍の、犯行直後の動画を公開した。

李承龍容疑者が八田銅像を切断する模様は、以前にも同じ団体がFB上で画像を公開していたが、動画が公開されるのは初めて。共犯の邱晉芛容疑者が撮影したものと思われる。動画のなかで李容疑者は、切断した八田銅像の頭部を抱えながら「この八田與一という日本人は、日本統治時代に嘉南平原の農民を搾取し、日本の天皇が進めた植民地支配を助けた」などと語っている。八田技師やこの銅像の謂れを知らぬ人間でも悪辣さを感じずにはいられない動画だ。

また動画が公開されたFBには「台湾独立に反対する、日本の奴隷どもを排除する」などと書かれているほか、銅像の迅速な復元を指示した頼清徳・台南市長を「台湾独立の指導的存在」「我々の先祖を搾取した暴徒の銅像を追悼するのは税金の浪費」などと非難している。

さらに「我々は正々堂々たる中国人だ。日本人に媚びることは断固拒否する。第二、第三の李承龍が現れることを私たちは信じている」と、八田銅像切断と同様の事件を煽動する書き込みもある。台湾国内には、日本統治時代に残された建築などが無数に存在し、なかには金銭に代えられない貴重なものも存在する。こうした価値ある建築や銅像などが統一派のターゲットとされないか心配される。

◆Facebook上に投稿された問題の動画

今般公開された問題の動画の一部。映っているのは李承龍容疑者

動画を公開した団体「攝政『新思維』」による声明。煽動ともとれる文言が書かれている