中国との統一をめざしていた馬英九政権に替わり、昨年5月に台湾人としての本土意識が強い蔡英文政権が発足してから1年、亜東関係協会が台湾日本関係協会に名称を変更するというおおきなエポックメーキングがあった台湾だが、その影響は日本にも及んでいる。
それが、6月4日に設立大会を開く「全日本台湾連合会」だ。産経新聞が伝えているので下記に紹介したい。
記事では日本台湾医師連合、美麗島交流会、栃木台湾総会、九州台日文化交流会など約20の台湾人団体が加盟する旨が述べられている。その他、在日台湾同郷会、在日台湾婦女会、台湾独立建国聯盟日本本部も加盟予定だ。
時代は確実に変わり、台湾の自主独立を後押しする機運が明確に出てきたようだ。
矢板明夫の中国点描 在日台湾人 新組織立ち上げ
【産経新聞:2017年5月24日】
日本の経済界などに大きな影響力を持つ「華僑組織」は近く大きく分裂する。複数の在日組織に属してきた台湾系の人々が、少なくとも数千人で新組織「全日本台湾連合会」(略称・全台連)を結成することが23日までに分かった。複数の関係者が明らかにした。参加者は「中国人」と呼ばれることに抵抗を感じる「台湾本土意識」の強い人々がほとんどだ。中国当局は新組織の結成を「台湾独立につながる動き」と警戒を強めている。
関係者によると、全台連は日台関係の促進を図ることを主な目的にしている。6月4日に都内のホテルで結成大会を開催する。日本台湾医師連合、美麗島交流会、栃木台湾総会、九州台日文化交流会など、日本各地の約20の台湾人団体の代表のほか、台湾を応援する日本の保守系政治家、財界関係者も出席する。
台南出身の在日実業家、趙中正氏が初代会長に就任する予定で、今後、日本の親台湾組織「日本李登輝友の会」と連携を深めるとしている。
結成大会を6月4日にしたのは、1989年のこの日に中国当局が民主化運動を武力弾圧した天安門事件が発生したことを意識したという。民主化を応援し、中華独裁政権と決別する決意が込められている。
中台すべて合わせた在日華人は約80万人とも100万人ともいわれる。そのうち、台湾にルーツを持つ人は1割以上とみられる。今後、その多くは全台連に合流するとみられ、海外における最大級の台湾人団体になる可能性がある。
中国当局は台湾人団体が「華僑組織」から離れる動きが世界各国に広がることを警戒し、情報収集を急いでいるという。
第二次大戦後、日本に在住する台湾人たちの「国籍」は「中華民国」に変更され、在日中国人が主導する組織に参加した人も多かった。1949年に新中国成立後、日本の華僑組織は「中華人民共和国系(北京)」と、「中華民国系(台北)」に大きく分かれたが、台湾系住民のほとんどは「日本中華連合総会」など、台北系に加盟した。今回、全台連に参加するメンバーの中に、各地の台北系華僑団体の幹部もおり、離脱は既存団体にダメージとなると指摘される。
全台連が結成される背景は、昨年5月、台湾独立志向の民進党の蔡英文・政権が発足したことに伴い、在日台湾人のアイデンティティーが強くなったこともあるが、中国政府の台湾に対する嫌がらせが最近、ますます顕著化したことも原因だといわれる。
例えば、台湾の民進党の元職員の李明哲氏が今春、中国で治安当局に拘束されたが、その容疑に関する説明はほとんどなく、面会を求めた李氏の妻の訪中を拒否したことが台湾人の中国に対する印象を悪化させた。また、世界保健機関(WHO)の総会から台湾の参加を中国が阻む圧力を加えたことも、在日台湾人の不満を高めた。
ある台湾人は、「私たちは中国共産党政権に対し強い嫌悪感がある。自分たちは中国人や華僑ではなく、台湾人、台僑であることを世界中にアピールしたい」と話した。
習近平政権が今後、高圧的な対外姿勢を取り続けるなら、全台連結成のように、世界各地でさまざまな形で中国離れはさらに進むとみられる。(外信部次長)