「李明哲氏支援の声明」

声明は李登輝総統のFacebookで公開された

わが国の国民たる李明哲氏が、確固たる理由もなく中国政府によって拘束されてから今日で88日が経過した。この間、救出に向けて台湾政府や関係者の努力が続けられているが、中国政府はいまだに釈放しないだけでなく、家族による面会の要求などにも応えておらず、このままでは中国は国家としての体面に傷をつけることになるだろう。

昨日(6月14日)、私は李明哲氏の夫人である、李凈瑜さんと面会した。夫の李明哲氏が拘束されてからというもの、夫人が救出のためにいかなる努力を払ってきたかを縷縷聞くにつけ、私はいたたまれない気持ちになった。ご家族の皆さんがどうか希望を捨てないことを祈ると同時に、私はここに3つの意見を表明したい。願わくば、国内外の関係者が力を合わせ、台湾の国民が救出されることを切に願うものである。

1、中国政府が正当な理由なく李明哲氏を拘束していることは、もはや国際社会における深刻な人権問題となっている。仮に李明哲氏が中国の法律に違反する行為を行ったのであれば、関連する法律および訴訟によって裁かれるべきであり、家族による面会の権利とともに、公平かつ公開の裁判を受ける権利を有するものである。中国政府は、基本的人権の尊重をゆめゆめ忘れるべきではなく、関連する部署は、すみやかに明確な説明をするとともに、台湾政府や家族に対して報告するべきである。

2、中国政府は両岸の国民の交流を妨げるべきではない。60年以上にわたり、中華民国および中華人民共和国の両国政府は、時として異なる価値観や理念を有したり、摩擦を生じたことはあったものの、両岸の人的交流は影響を受けることなく今日までお互いに相当程度の理解を深めてきた。

しかしながら、今般の李明哲氏の理由なき拘束は、長期にわたって民間で育まれてきた良好な関係を引き裂くものである。私は中国政府に対し、これ以上、両岸関係を毀損する行為を止めるとともに、一時的な政治的要因によって民間の交流活動を萎縮させ、破壊する行為を慎むよう求める。

中国政府は、理性的態度を取り、なおかつ効率性を考慮するべきであり、むやみに摩擦を生むべきではない。速やかに過ちを認め、李明哲氏を解放して台湾に帰国させるべきである。それこそが、国際社会における中国の体面を取り戻すものであり、なおかつ両岸の民間交流の良好な基盤となるものである。

3、台湾政府および全国民は、支持する政党やエスニック・グループ、政治的立場に関係なく、より多くの関心を寄せるべきである。李明哲氏への声援を結集することは、台湾政府やご家族を応援することとなり、全国民が同胞に関心を寄せることの表明になる。

李明哲氏が中国で拘束されて以降、台湾政府が鋭意努力を続けてきたことに私は敬意を表する。同時に、ご家族が味わってきた苦悩はいかばかりかと想像する。台湾社会の人々がそれぞれの立場から、あらゆる手段で救出のための努力を続けられることを願う。同時に、関係する部署は救援のための努力を続けるとともに、ご家族への十分なケアが提供されることを願う。台湾の全国民が心をひとつにすることが、一日も早い李明哲氏の帰国につながるだろう。

李登輝

中華民国106年(2017年)6月15日