6月19日、今井正(いまい・ただし)理事長の後任に谷崎泰明(たにざき・やすあき)前駐インドネシア特命全権大使が就任し、日本台湾交流協会の機関誌「交流」7月号に理事長就任の挨拶文を発表した。
この中で、過去最高を更新し続ける日台間の人的往来数や21本に及ぶ取決め、覚書等の合意文書などの実例を挙げながら、2011年の東日本大震災が「日台関係における一つの転機」という見方を示した。また、この日台関係の緊密化を背景として、日本が「交流協会」から「日本台湾交流協会」へ、台湾が「亜東関係協会」から「台湾日本関係協会」への名称変更が行われたとの認識も示している。下記にその全文をご紹介したい。
なお、谷崎理事長は8月22日から25日まで台湾を訪問、蔡英文総統などと会見する予定と伝えられている。
日本台湾交流協会理事長就任御挨拶 谷崎 泰明
【台湾情報誌『交流』7月号(No.916):2017年8月10日】
このたび、公益財団法人日本台湾交流協会の理事長を拝命いたしました。我が国にとって重要なパートナー、大切な友人である台湾との実務関係を任されることになり、大変光栄であるとともに、その責任を痛感しております。
日本と台湾との間に正式な外交関係はありませんが、世界に誇れる友好関係と信頼関係があります。当協会が昨年実施した世論調査によれば、台湾住民の80%が日本に親しみを感じると答え、56%が最も好きな国は日本であると回答してくれました。日本人も台湾には親近感を抱いており、駐日台北経済文化代表事務所の調査によれば、日本人の67%が台湾を身近に感じると答えています。今日の良好な日台関係は、多くの関係者の長年にわたる御努力の賜物であり、当協会の賛助会員をはじめとする日台双方の全ての関係者に対し、協会を代表して心より御礼申し上げます。
2011 年3 月に東日本大震災が発生した際、台湾の方々が破格とも言えるほど大きな支援を我が国に寄せてくださったことは、当時、駐ベトナム大使を務めていた私にも深い印象と大きな感動を与えました。東日本大震災は、胸が締め付けられるほど痛ましい大惨事でありましたが、同時に、私たちの隣にこれほど大切な友人がいたということを多くの日本人に気付かせ、日台関係における一つの転機をもたらしてくれたように思います。
その後、日本と台湾との関係は急速な緊密化と発展を遂げており、日台間の人的往来は、過去最高記録を毎年更新し続け、昨年はついに双方向で600 万人を超え、僅か5 年間で380 万人も増加しました。わたしが最近勤務したベトナム、インドネシアからも訪日観光客が急速に増加していますが、台湾からの訪日者数の多さはまさに桁が違い、2,300 万という台湾の人口規模に照らせば、1年間に420万人もの台湾の方々が我が国を訪れているというのは、誠に驚くべきことであります。
また、日台間の各種実務交流・協力を進めるために当協会と台湾側カウンターパート(台湾日本関係協会)が結んだ取決め、覚書等の合意文書は、2012 年から2016 年の僅か5 年間で21 本に及び、産業協力、漁業、医薬品規制、鉄道、金融、観光、出入境管理、原子力、防災、二重課税防止、製品の安全性、言語教育等、極めて多岐にわたる分野で、実務交流・協力の枠組みが急速に整備されてきています。日台間では、国民感情の緊密化が実務協力の深化を後押しし、それが民間交流のさらなる拡大を生み出すという好循環が生まれていると言って良いでしょう。
このような日台関係の緊密化を背景として、当協会は、1972 年当時から掲げてきた「交流協会」という名称を改め、本年1 月から「日本台湾交流協会」として新たなスタートを切りました。これは、かつてないほど多くの方々が日台関係に関心を寄せ、日台間の往来や交流に関わるようになってきたことを踏まえ、当協会としても、我が国の台湾に対する窓口機関として、その存在をより積極的にPR していきたいという気持ちの表れであります。台湾側のカウンターパートも、本年5 月に「亜東関係協会」から「台湾日本関係協会」に改称され、日台双方の窓口機関が期せずしてともに「日本」と「台湾」を冠する組織に生まれ変わりました。
日本台湾交流協会は、平素から協会の事業に多大な御支援・御協力をいただいている賛助会員の皆様、日台関係に御関心を寄せていただいている多くの関係者の皆様、そして日本政府の御支援・御協力を賜りながら、日台関係の発展に引き続き尽力してまいる所存でありますところ、何卒よろしくお願い致します。
【谷崎泰明理事長 略歴】
1951 年生。東京大学法学部卒。外務省大臣官房総務課長、同総括審議官、領事局長、欧州局長、研修所長、駐ベトナム特命全権大使、駐インドネシア特命全権大使等を歴任。