2014年と2015年の李登輝元総統ご来日時にスタッフとしてお手伝いいただいた方々は150人ほどに及びますが、スタッフの方々に感謝の念をあらわしたいと、本会は李登輝元総統と夕食を共にする「李登輝元総統ご来日スタッフ訪台団」(団長:柚原正敬・本会事務局長、副団長:和田有一朗・理事)を企画、9月1日〜3日の日程で訪台してまいりました。
9月2日の華泰王子飯店における李登輝元総統との夕食会には19名が参加し、李登輝基金会からも王燕軍・秘書長と早川友久秘書も同席。このときの李元総統は大変お元気で、食事もよく召し上がり、ウィスキーも普段よりも飲まれるものですから、慌てて秘書がウィスキーを遠ざけたほどでした。
15分ほどご挨拶いただいたすぐ後、食事もそこそこに「なにか質問はありませんか? なんでも答えますよ」と述べられましたので、秘書が「まず召し上がってください」と制するほどで、この日は絶好調のように見受けられました。
約2時間、夕食をともにしながら、北朝鮮のミサイル問題や蔡英文政権の現状、日台交流のさらなる深化などに関する参加者の質問に丁寧に答えられ、つつがなく終えることができました。参加者も大満足の一夜でした。
最近はなかなかお元気なお姿をお見かけしないことが少なくなく、お会いした人々が心配することもあったのですが、この日に限ってはすこぶるお元気でした。
確かに御年94歳ですので体力の衰えは致し方ありません。足腰もだいぶ弱りましたし、お話の途中に固有名詞などがなかなか出てこないときも見受けられます。しかし、歩けないほどではありませんし、受け答えは実にしっかりされています。
このときも冒頭で、お手伝いいただいたスタッフに感謝の意を表するとともに「また機会を見つけ、日本を訪れることが出来ることを楽しみに」していると、とても意欲的なご挨拶をいただきました。下記にその全文をご紹介します。
日本李登輝友の会の柚原正敬先生をはじめ、訪台団の皆さま、こんばんは!
2014年および2015年に訪日した際には、大変お世話になりました。ここに改めて、心より感謝申し上げます。
2014年の訪日では、「これほどまでに日本と縁の深い父親なのに、これまで一度も一緒に日本へ行ったことがない」という娘たちの希望もあって、家内に加えて娘たちとともにお世話になりました。
また、初めて北海道を訪問し、その雄大さと、本州などとはまた違う趣を感じたことを、昨日のように覚えております。
大阪でお話しした「これからの世界と日本」、そして東京での「人類と平和」の内容は、北朝鮮をはじめとする東アジア情勢がますます緊迫する昨今、3年が経った現在でも、ぜひとも皆さんに今一度目を通していただきたいものだと自負しております。
また、2015年には、台湾の総統経験者として初めて、国会議員会館で講演をするという身に余る光栄にも恵まれました。
当日は、「台湾のパラダイムの変遷」というタイトルで、台湾のあるべき姿、これからの進む道 を、たくさんの国会議員の方々に講演を聞いていただくことが出来ました。
また、宮城県では、2007年に家族で訪問した松島の瑞巌寺を訪れました。
前回訪れた際に、家内とともに作った俳句の句碑が、瑞巌寺に建てられたことを、たくさんの方から聞いており、ぜひ再訪したいと願ったのです。
松尾芭蕉は、松島の風景が余りにも美しすぎて俳句を作れなかったと聞いておりましたので、手前味噌ですが、恥ずかしながら「それでは、私と家内でちょっと作ってみましょうか」と言って作ったのが、2つの俳句です。
私は「松島や 光と影のまぶしかり」と詠み、家内は「松島や ロマンささやく夏の海」と作りました。
あの時、家内から「光と影」と読んだら、雨が降った時どうするのか、と笑われたことを思い出します。
その後、日本李登輝友の会・宮城県支部の皆さまが大変努力されて、瑞巌寺に句碑が建てられたと聞いたとき、これは「ノーベル賞以上の栄誉だ」と感激したものです。
日本は何度訪れても素晴らしい国です。
以前から何度も主張しているように、伝統と進歩という、一見相反するものがうまく組み合わさり、美しい日本の文化や社会の秩序を生み出しています。
ぜひともまた機会を見つけ、日本を訪れることが出来ることを楽しみにしながら、今夜は皆さんとゆっくりお話ししたいと思います。
最後になりますが、日本李登輝友の会の皆さんを心より歓迎するとともに、私の訪日の際にお手伝いいただきましたことに改めて感謝いたします。
どうもありがとうございました。
2017年9月2日
李登輝