日台間では姉妹都市などの都市間提携や近年目覚ましい鉄道提携だけではなく、湖、山、鉄道、神社と廟、温泉、動物園、博物館などさまざまな協定が結ばれている。中には、東京都水道局と台北市水道事業部門による水道提携(2013年4月)や共同通信社と中央通信社のメディア同士の協力協定(2013年5月)などもある。教育委員会同士の提携も4件ある。
このような協定の中で、静岡県が率先して力を入れて来たのが台湾との防災協定だ。甚大な被害が予想される南海トラフ巨大地震による地震や津波などの災害対策に積極的に取り組んでいる静岡県の地域性を反映した独特の取り組みで、来る10月19日、静岡県危機管理部が高雄市消防局と「防災に関する相互応援協定」を結ぶという。
静岡県が台湾の自治体と防災分野における情報交換および相互支援交流を進めるため、台北市内で初の「防災会議」を開催したのは2013年8月26日のことで、この会議に参加した台北市、新北市、台南市、桃園県、嘉義県の3市2県の各政府消防局と「防災分野における覚書」を締結している。
翌年の2014年2月17日には、連絡窓口の設置や平時の業務提携、災害時の相互サポートおよび被災後の復興・再建支援などを含んだ「防災に関する相互応援協定」を5市1県(新北市、台北市、台南市、桃園市、基隆市、嘉義県)の消防局と締結。
さらに本年(2017年)1月9日には、台中市政府消防局とも「防災に関する相互応援協定」を締結するに至り、6つある行政院直轄市(新北市、台北市、桃園市、台中市、台南市、高雄市)の中で締結していないのは高雄市だけとなっていた。それが10月19日に実現するという。
静岡県のこの地道な努力に敬意を表するとともに、地元紙の静岡新聞の記事を下記にご紹介したい。
また、静岡県では県側の動きに合わせ、民間でも防災に対する意識が高く、昨年(2016年)9月26日、日台の防災産業分野の企業による協力関係を促進しようと、静岡県防災用品普及促進協議会が台湾防災産業協会と「産業協力に関する覚書」を締結している。
ちなみに、南海トラフ巨大地震は静岡県ばかりでなく、東京都や神奈川県、愛知県、三重県、和歌山県などにも甚大な被害が予想されている。それを視野に、横浜市は柯文哲市長の来日に合わせ、2016年1月28日に台北市と「防災分野での協力覚書」を結んでいる。
高雄市と防災協定 静岡県危機管理部、台湾主要6市と締結へ
【静岡新聞:2017年10月4日】
静岡県危機管理部が19日に、台湾中央政府直轄市の高雄市消防局と防災に関する相互応援協定を結ぶ。静岡県は高雄市以外の同政府直轄の5市と同様の協定を締結済みで、台湾の主要6都市すべてとの防災協定締結は日本国内で初めて。台湾との定期便が運航する静岡空港を活用し、国際的な防災交流の促進を図る。
協定は、平時から防災活動に必要な情報交換や訓練・研修の受け入れなどを進め、災害発生時は相互に人的、物的支援を行う内容。19日の締結式は、高雄市で開かれる日台防災協力セミナーの中で行い、杉保聡正県危機管理部長が出席する。
台湾は地震や水害など防災に関する関心が高い。県危機政策課の担当者は「主要都市すべてと協定を結ぶことで、台湾全体と円滑な相互支援ができる。普段から顔の見える関係を築き、いざという時の協力体制を固めたい」と意欲を示す。
静岡県は2014年2月と17年1月に台北市や新北市、台中市など計6市1県と防災協定を結び、県消防学校が台湾内政部消防署訓練センターと教官同士の研修交流にも取り組む。民間でも県防災用品普及促進協議会が日本貿易振興機構(ジェトロ)との連携で、台湾防災産業協会と覚書を取り交わし、防災関連産業で双方の振興と発展を目指している。