群馬県が台湾と縁(ゆかり)が深いことは、本会HPや本会メールマガジン『日台共栄』誌上で何度かお伝えしてきている。姉妹都市などの都市間提携は8件と全国でもっとも多く結んでいる。
これは、上野村が1989年10月に苗栗県卓蘭鎮と姉妹都市を結んだことにはじまり、群馬県と彰化県(2012年12月)、群馬県と台中市(2012年12月)、群馬県と高雄市(2013年3月)、みなかみ町と台南市(2013年12月)、渋川市と彰化県社頭郷(2014年11月)、渋川市と彰化県員林市(2015年4月)、桐生市と雲林県6自治体(2015年10月)が友好協力協定などを結んでいる。
また、奇美実業創業者の許文龍氏は、これまで台湾の発展に尽くした台湾人や日本人を讃えて胸像を制作あるいは制作を指示した台湾人は李登輝総統や鄭南榕など10人で、日本人も11人を数える。11人の日本人とは、後藤新平、新渡戸稲造、浜野弥四郎、鳥居信平、八田與一、松木幹一郎、磯永吉、末永仁、新井耕吉郎、羽鳥又男、羽鳥重郎のことで、「台湾紅茶の父」新井耕吉郎(あらい・こうきちろう)、「最後の台南市長」羽鳥又男(はとり・またお)、「台湾風土病の撲滅」羽鳥重郎(はとり・じゅうろう)の3人が群馬県出身だ。
さらに、日本が台湾で最初に開いた芝山巌(しざんがん)学堂で台湾教育に全身全霊で取り組むも、匪賊の凶刃に斃れた六士先生の一人の中島長吉(なかじま・ちょうきち)も群馬県出身だ。
群馬にはまだまだ台湾と関係の深い人物がいる。その一人が「台湾図書館の父」や「基隆の聖人」と今でも台湾の人々から尊敬されている石坂荘作(いしざか・そうさく)で、石坂は群馬県吾妻郡は東吾妻町(ひがしあがつままち)出身。
昨年6月に台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表が東吾妻町訪問したことで機運が盛り上がり、今年に入って2月8日には中澤恒喜(なかざわ・つねのぶ)町長が基隆を訪問し「石坂さんが尊敬されているのを実感」して帰ってきたそうだ。また、石坂の誕生日の3月6日を期して石坂荘作顕彰会が発足するという。下記にそれらを伝える「東京新聞」の記事をご紹介したい。
来る2月25日には、本会理事でもある前橋市文化スポーツ観光部前橋学センター長の手島仁(てしま・ひとし)氏と元国立国会図書副館長の宇治郷毅(うじごう・つよし)氏を講師に東吾妻町教養講座「石坂荘作氏の功績を学ぼう」を開催するという。記事にも出てくるが、東吾妻町のホームページでポスターを掲載して詳しく案内しているので別掲でご紹介したい。
なお、群馬県にはこれらの人以外にも、「上毛かるた」を創作し、また「いともかしこし台湾神社」など「台湾いろはかるた」も作った須田清基(すだ・せいき)や、共愛女学校の校長を40年間もつとめた台湾出身の周再賜などもいる。
奇しくも同じ2月25日、九州・熊本県益城町(ましきまち)でも台中市大甲区で教育に携わり、地元の人々から今でも「大甲(たいこう)の聖人」と讃えられている郷土の偉人「志賀哲太郎(しが・てつたろう)先生顕彰のつどい」が益城町、益城町教育委員会、志賀哲太郎顕彰会によって開催される。
地道ではあるが、台湾と関係深い郷土の偉人を顕彰する、このような地元の取り組みこそ今後の日台関係をさらに深めてゆくものと確信する。お近くの方は東吾妻町に、また益城町にぜひ足を運んでいただき、主催者の熱意に応えていただきたい。
◆熊本県益城町で郷土の偉人「志賀哲太郎先生顕彰のつどい」(2月25日開催)
東吾妻町出身・石坂荘作 台湾での功績たたえよう
【東京新聞「群馬版」:2018年2月18日】
東吾妻町出身で若くして台湾に渡り、教育を中心に地域の発展に尽くして尊敬されている石坂荘作(1870〜1940年)。その功績をたたえ、石坂の縁を生かして台湾と交流しようという動きが同町で進んでいる。
石坂は27歳の時に台湾に渡り、事業の傍ら40年余り、台湾北部の基隆(キールン)市の発展に尽くした。日本人と台湾の人が席を並べて学ぶ初の夜間教育機関「基隆夜学校」や後の市立図書館となる「石坂文庫」、「和洋裁縫講習所」を創設し、人々が教育を受けることができるよう尽力した。
前橋市文化スポーツ観光部参事の手島仁さんは本紙群馬版の連載「群馬学講座」(2011年5月23日付)で石坂を紹介している。基隆夜学校が無料だったことや、石坂文庫が基隆市の「知識の庫」と呼ばれたことなどを説明。石坂が「台湾図書館の父」「基隆聖人」と称され、敬愛されている、
とつづっている。
東吾妻町を昨年6月、台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表が訪問。中沢恒喜町長らとの会談に同席した町内に住む高橋徳樹・県海外支援交流会事務局長(当時)が石坂について説明したことから、双方で石坂の縁を通じた交流への機運が盛り上がったという。
中沢町長は今月8日、基隆市を訪問。基隆夜学校がもとになった現在の学校や図書館の跡地、資料を見学した。中沢町長は取材に「学校では大歓迎され、石坂さんが尊敬されているのを実感した。台湾と日本の学生が分け隔てなく並ぶ当時の写真を見て感動した」と話した。
中沢町長は基隆市の林右昌市長と会い、中学生の相互訪問や文化交流友好協定を結ぶ構想などを話し合ったという。「台湾では岩櫃山も舞台となった大河ドラマ『真田丸』も放送され町への観光客も期待できる」と力を込める。
高橋さんら有志は昨年6月、石坂荘作顕彰会準備委員会をつくり、資料を収集している。石坂の誕生日に当たる今年3月6日に正式に顕彰会を発足させる。準備委員会事務局長を務める高橋さんは「町では石坂さんの偉業を知る人は少ない。台湾との交流を深める一方で地元で広く知ってほしい」と話す。
そのため町教育委員会が主催、準備委員会共催で「石坂荘作氏の功績を学ぼう」と題した教養講座を今月25日午後一時半から町中央公民館で開く。手島さんが「群馬と台湾の絆−台湾で敬愛される上州人−」、元国立国会図書館副館長で元同志社大学社会学部教授の宇治郷毅(うじごうつよし)さんが「石坂荘作氏の現代的意義」と題して話す。入場無料で事前の申し込みは必要ない。問い合わせは町中央公民館=電0279(68)2412=へ。