トランプ大統領は「台湾旅行法」(H.R. 535─Taiwan Travel Act)案に署名した。署名期限日だった3月16日(現地時間)のことだ。ホワイトハウスもすぐホームページに 「President Donald J. Trump Signs H.R. 294, H.R. 452, H.R. 535, H.R. 3656, and S. 831 into Law(ドナルド・J・トランプ大統領は、H.R. 294、H.R. 452、H.R. 535、H。R. 3656、およびS. 831の法律へ署名)」とアップしている。
本会HPや本会メールマガジン『日台共栄』誌上で、米国連邦議会の上院が2月28日(現地時間)に全会一致で米国と台湾の政府高官の相互訪問を解禁する「台湾旅行法」(Taiwan Travel Act)案を可決したことを伝えた際に、この「台湾旅行法」が下院も上院も同じ法案内容で、どちらも全会一致で可決されていることや、米国のこれまでの中国への対応から「恐らくトランプ大統領が署名することはほぼ確実と見ていいだろう」とも記したが、この署名によって改めてトランプ大統領の中国と台湾への姿勢が浮き彫りになった。
下記に紹介する毎日新聞が伝えているように、上下両院とも全会一致で可決していたことで「法案は大統領が署名しなくても自動成立する見通しだった」にもかかわらず「トランプ氏はあえて署名することで、支持する姿勢を鮮明にした」点がポイントだ。
案の定、中国の在米中国大使館は即座に「強烈な不満と断固たる反対」を表明する声明を出し、台湾の外交部は「トランプ大統領の法案署名に感謝する」という声明を出したという。
トランプ大統領はこの法案に対する中国の反応を熟知している。中国を刺激しないようにするなら、署名期限の3月16日までに署名しなくても自動的に成立していたのだから、署名をせずに成立させる方法もあった。だが、トランプ大統領は署名した。中国の怒りようを見れば、米国が中国にかけた圧力の大きさが分かる。
本会HPや本会メールマガジン『日台共栄』誌上で何度か紹介したように、この「台湾旅行法」は下記のような内容を定めている。
一、米国の全てのレベルの政府関係者による台湾訪問および対等な行政レベルにある台湾の政府関係者への訪問を解禁する。
二、台湾の政府関係者の尊厳を守る原則の下、台湾の政府高官の訪米および国務省や国防総省を含む米政府高官との対面を解禁する。
三、米駐在の台湾の代表機関、駐米台北経済文化代表処および台湾が設置した全ての機関による米での正式な活動を奨励する。
つまり、全てのレベルの政府関係者による台湾訪問とは、米国と台湾が準外交関係となることであり、国務省や国防総省を含む米政府高官との対面を解禁とは、準軍事同盟関係に進むことを意味していると言える。その意味で画期的な法律なのである。
台湾旅行法が成立 閣僚の相互訪問を促進
【毎日新聞:2018年3月17日】
トランプ米大統領は16日、米国と台湾との間ですべての閣僚による相互訪問を促進する台湾旅行法案に署名し、同法は成立した。米台は国交がなく、これまで相互の高官訪問を自制してきた。「一つの中国」原則を掲げる中国は強く反発し、在米中国大使館は16日、法成立に「強烈な不満と断固たる反対」を表明する声明を出した。
同法はすべての閣僚を含む米台の高官交流が「米政府の政策であるべきだ」と規定。議員立法で提案され、上下両院とも2月末までに全会一致で可決した。法案は大統領が署名しなくても自動成立する見通しだったが、トランプ氏はあえて署名することで、支持する姿勢を鮮明にした。
米国が対米貿易黒字削減を求めて中国に圧力をかける中、米中関係がさらに複雑化する恐れがある。一方、トランプ政権が台湾との「相互訪問の自粛」を対中国の交渉カードに使うことも考えられ、実際に相互訪問が実現するかは不透明だ。
同法を巡り、中国はこれまでも「中国と米国の関係に深刻な障害と損害をもたらさないようにすべきだ」(中国外務省の華春瑩・副報道局長)として、米国をけん制してきた。
一方、台湾外交部(外務省)は17日、「トランプ大統領の法案署名に感謝する。台米のパートナーシップ関係を深化させ続けていく」との声明を出した。