外務省は基本的に毎週1回、水曜日に定例の記者会見を行っている。5月16日、外務省の安藤俊英・副報道官はこの定例記者会見において「感染症対策を始めとする国際保健課題への対応に地理的空白を生じさせないためにも,台湾が何らかの形でWHO総会に参加することが望ましい」と表明した。

これは、中央通信社記者による台湾の世界保健機関総会(WHA)へのオブザーバー参加に対する日本政府の見解ついての質問に答える形で表明された。外務省のホームページにこの記者会見の質疑応答の概要を掲載しているので下記に紹介したい。

この外務省による政府表明に先行し、5月14日に日本台湾交流協会は中国語と日本語により「日本は台湾のWHO総会への参加を引き続き支持します」とフェイスブックで表明し、米国も、すでに5月9日に米国在台協会(AIT)がフェイスブックで台湾の総会出席を強く支持すると表明している。

さらに、米国は下院外交委員会のエド・ロイス委員長と民主党のエリオット・エンゲル議員が5月16日(米国東部時間)に声明を発表し、連邦議会の下院議員172名が連名でWHOのテドロス事務局長宛に台湾を今年の総会に参加させるべきだと呼びかける書簡を送ったことを明らかにしている。上院外交委員会のマルコ・ルビオ議員や複数の上院議員も、近日中にWHOのテドロス事務局長宛に連名で台湾の参加を支持する書簡を送ると報じられている。

このような米国や日本台湾交流協会の積極的な表明に比べると、日本政府の支持表明は記者の質問に答える形で行われ、なんとも消極的な印象をぬぐえない。

安倍総理がすでに表明しているように「台湾は基本的な価値観を共有する重要なパートナーであり、大切な友人」(2015年7月29日「平和安全法制に関する特別委員会」答弁)だとするなら、昨年のように、報道官ではなく菅義偉・官房長官が参加支持を表明するとか、安倍総理がフェイスブックで表明するとか、より積極的に台湾を支持する姿勢をとれないのだろうか。

中国の強圧的な台湾封じ込めに、2018年国防授権法や台湾旅行法の制定で台湾との関係強化を国内法の整備で進め、米企業が台湾の潜水艦自主建造計画の商談に参加することを認めるなど、米国は次々と「自前の台湾政策」を実施している。

それに比べ、台湾に情報を提供することを骨子とする日本版・台湾関係法(日台関係基本法)の制定さえままならず、「自前の台湾政策」が見えてこない日本政府の対応は、どうにも歯がゆい。


外務省HPP:世界保健機関(WHO)における台湾のオブザーバー参加

安藤外務副報道官会見記録:平成30年5月16日(水曜日)16時31分 於:本省会見室)

【中央通信社 黄記者】本年のWHO臨時総会は5月21日から開催されます。台湾はオブザーバー参加を目指してまいりましたが,昨年に続き,本年もWHOから台湾に招待状が届きませんでした。本件に関して,日本政府の見解を伺います。

【安藤副報道官】我が国といたしましては,WHO総会への台湾のオブザーバー参加につきましては一貫して支持をしてきております。実際に台湾は,2009年から2016年まで8年連続でオブザーバー参加を実現してきたと承知しております。

国際化の進展に伴い,地球規模の課題が増加している昨今において,世界的な公衆衛生危機対応の強化は不可欠であると認識しております。

今年は,台湾におけるSARS発生から15年目の節目の年でありまして,感染症対策を始めとする国際保健課題への対応に地理的空白を生じさせないためにも,台湾が何らかの形でWHO総会に参加することが望ましい,このように考えております。