李登輝総統は6月22日から沖縄を訪問し、24日に摩文仁丘で執り行われる台湾出身戦歿者の顕彰慰霊祭に臨席される予定で、招聘元の一般社団法人日本台湾平和基金会と本会は沖縄の日本琉球華僑総会や八重山経済人会議などとともに急ピッチで準備を進めています。
この慰霊祭においては、李総統が揮毫された「為國作見證」の文字を刻んだ慰霊碑の除幕式も併せて執り行われることになっています。
李総統の慰霊祭への参列に対し、中国が「植民地統治の美化だ」「侵略戦争と軍国主義を支持するような行為には断固として反対する」と表明したそうです。
中国がこういう「難癖」をつけてくることは予想されたことです。これまでも李登輝元総統のご来日に対して、例えば2004年のときは、当時の王毅・駐日中国大使が李元総統を「戦争メーカー」と指弾し、「その人物を日本に受け入れることは『一つの中国』政策に反する」として小泉内閣にビザを発給しないよう圧力をかけたことがありました。
また、2015年のときは「李登輝は頑固な『台湾独立』分子だ。日本は中国の厳正な交渉を無視し、李登輝が訪日して『台湾独立』活動に携わることに便宜を提供した。中国はこれについて重大な懸念と強い不満を表明する」と述べて反対するなど、来日を受け入れた日本政府へも不満を表明していました。
「独立分子の親玉」とする李総統が日本に行くことがよほど気に食わないのかもしれません。しかし、日本政府は李総統を「日本の要人」と認定しており、今回も警察庁主導による厳重な警護態勢を敷きます。
それにしても、今回のようなクレームをつけるのは、中国の大いなる自己矛盾、自家撞着です。なぜかと言いますと、中国はこれまで台湾は「中華人民共和国の領土の不可分の一部」であると繰り返し主張し、「核心的利益」としてきました。つまり、台湾が自国の領土という論理なら、そこに住む台湾人は同胞であるはずで、同胞が同胞を慰霊するのは当たり前のことで、むしろ称賛されるべきことになるはずです。
逆に、このようなクレーム表明は、李総統がこの高齢で日本に行くことに驚き、脅威を覚えた裏返しの反応とも見えるのは編集子だけでしょうか。
ちなみに、1973年(昭和48年)4月に厚生省(現在の厚生労働省)の発表によりますと、大東亜戦争に出征した台湾籍の軍人・軍属数は20万7,193名で、うち戦歿者は3万304名です。また、靖國神社によりますと、台湾籍のご祭神は2万7,864柱がお祀りされています。
李総統はすでに2007年のご来日の折に靖國神社に参拝され、2008年の沖縄ご訪問では平和の礎に参拝されていますので、今回のご来沖で3度目の参拝となります。台湾の元総統が台湾人同胞を慰霊顕彰するのはごくごく自然なことです。それを政治問題化しようとする中国こそ不自然であり、非人間的な主張ではないでしょうか。
中国が李登輝氏の慰霊祭出席に反対 国務院の報道官「植民地統治の美化だ」
【産経新聞:2018年5月30日】
中国国務院(政府)台湾事務弁公室の安峰山報道官は30日の記者会見で、台湾の李登輝元総統が6月に沖縄県を訪問して台湾人戦没者の慰霊祭に出席することに対し「植民地統治の美化だ」と反発した。
安氏は「侵略戦争と軍国主義を支持するような行為には断固として反対する」と述べた。
太平洋戦争末期の沖縄戦では、台湾人も日本兵として犠牲となった。慰霊祭では李元総統が揮毫(きごう)した台湾人戦没者慰霊碑の除幕式も行われるという。