8月14日、台湾で初めての慰安婦像が台南市の観光名所「林百貨」の向かいに設置され、除幕式が行われた。
中央通信社が伝えるところによれば、出席した馬英九前総統は「1937年12月に旧日本軍が当時中華民国の首都だった南京を占領し、大規模な虐殺や強姦、放火、強盗などにより30万人を死亡させ、数万人の婦女が強姦されたと説明。日本政府は軍人の性的欲求を満たすために慰安所を設置し、誘拐や恐喝、騙しなどの手段で婦女を日本軍の性奴隷となるよう強要したとし、台湾には1200〜2000人の慰安婦がいたと主張した」という。
周知のように、南京虐殺30万人説は中国がこれまで主張してきたところで、中華民国はそもそも10万人説だったので、馬前総統の認識はまさに今の中国と同じだ。慰安婦に関しても、韓国や中国側の主張とほぼ変わらない。
ちなみに、朝日新聞によれば、慰安婦像を建てたのは「国民党の支援を受けて今春結成された団体『台南市慰安婦人権平等促進協会』」という団体だそうで、「国民党の地元支部が土地を提供」し、「今秋の統一地方選挙で台南市長選に立候補する国民党の候補予定者も参列した」という。産経新聞は「人権団体を名乗る像の設置者は事実上、同党台南市支部」「促進協は4月に国民党の台南市議が設立。像は党支部脇に置かれ」ていると報じている。
しかし、よく知られているように、慰安婦に関する強制連行説や性奴隷説、軍関与説はすでに破綻している。
本会常務理事の伊藤哲夫氏が代表をつとめる日本政策研究センターのホームページには、西岡力氏が代表の「中国人慰安婦問題研究会」が一昨年6月、『中国人慰安婦問題に関する基礎調査』(西岡力、勝岡寛次、北村稔、島田洋一、高橋史朗)や、西岡力氏が英文で『Comfort Women Issue in Sharper Focus(慰安婦問題─さらに問題の核心に迫る)』(2015年)発表した著作を掲載している。とくとご覧いただきたい。
・中国人慰安婦問題研究会編著『中国人慰安婦問題に関する基礎調査』(2016年6月17日)
・Tsutomu Nishioka “Comfort Women Issue in Sharper Focus”(2015年)
また昨日(8月15日)、菅義偉・内閣官房長官は15日の記者会見で、台湾での慰安婦像が設置を受け、「わが国政府の立場やこれまでの取り組みと相いれない極めて残念なことだ」(産経新聞)と述べ、日本台湾交流協会を通じて申し入れを行ったことを明らかにしている。
下記に、昨日、日本台湾交流協会はホームページに、その申し入れ「台南市における慰安婦関連式典及び慰安婦像について」を発表した。その全文を下記に紹介したい。
国民党によるこのような画策で、日台の絆に亀裂が入ることは考えにくいが、慎重に対応し、台湾側が誤解しているとするなら誤解を解くべく、政府には誠心誠意の対応を期待したい。
日本台湾交流協会からのメッセージ:台南市における慰安婦関連式典及び慰安婦像について
【日本台湾交流協会:2018年8月15日】
8月14日,国民党台南市党部関係者らが,数多くの日本人観光客が訪れる台南市の目抜き通りに慰安婦像を設置したことは,我が国政府の立場やこれまでの取組と相容れないものであり,当協会として大変残念に思っております。
我が国は,台湾人元慰安婦を含む慰安婦問題について,アジア女性基金の事業等の取組により誠実に対応してきております。アジア女性基金は,台湾において呼びかけに応じた13名の元慰安婦の方々に対し,日本国民の償いの気持ちを表す「償い金」として一人当たり200万円,医療・福祉支援事業として一人当たり300万円の支給等を実施してきました。その際には歴代の内閣総理大臣からお詫びの気持ちを表明する手紙を元慰安婦の方々にお届けしました。
我が国としては,慰安婦問題は多数の女性の名誉と尊厳を傷つけた問題であると認識し,これまで誠実に対応してきたものと考えております。我が国の取組が台湾の方々から正当な評価を受けられるよう,引き続き努力していきたいと考えております。
2018年8月15日
公益財団法人日本台湾交流協会