交流協会台北事務所HPに掲載された沼田幹夫代表の要望

7月3日、台湾で税則改正案が立法院において可決され、農水産品と加工食品計15品目の関税率が引き下げられる。清酒を含む穀物酒の関税率が現行の40%から20%、ヤマイモが16%から12%、温州ミカンが30%から15%に引き下げられるなど、日本からの輸入品が多い。

産経新聞は「蔡英文政権は住民投票の結果、福島など5県産食品の輸入が解禁できないことへの実質的な補償として関税引き下げを立案。……日本の農林水産省は『わが国と調整して行われた措置ではなく、コメントする立場にない。輸入規制撤廃を求める方針に変わりはない』(国際地域課)」と報じている。

台湾との日本の窓口機関である日本台湾交流協会台北事務所の沼田幹夫代表(駐台日本大使に相当)も「日本産食品に対する台湾の輸入規制措置を早期に撤廃して欲しい」とコメントを発表した。

沼田代表は、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県の食品に対する台湾の輸入規制措置こそ「日台間に横たわっている問題の中で、私達にとって最重要の問題」とも述べている。

沼田幹夫代表は昨年7月24日、中国国民党が5県産食品の輸入禁止措置継続について賛否を問う公民投票の実施を目指した署名活動を始めたことを受け「私は失望を禁じ得ません」と表明し「科学的な根拠が示されないまま,こうした輸入規制措置が継続されることは,日本と台湾の友好関係にヒビを入れるものになる」というメッセージを発表して自制を求めていた。

また、呉釗燮・外交部長も、輸入解禁の是非は科学的な根拠に基づいた国際的な基準にのっとって考えられるべきとの見解を表明し、台湾問題に造詣が深い自民党の萩生田光一・幹事長代行も「台湾の友人が日本の検査を通過した食品の安全性に懸念を抱いていることは遺憾だ」と述べ、政治問題化していることに懸念を表明していたにもかかわらず、11月24日の公民投票では継続賛成が反対を上回った。

関税引き下げという「実質的な補償」措置はありがたいが、蔡英文政権は中国国民党が公民投票案とする前に政治決断して禁止措置を解除できなかったことが悔やまれる。

実は、2016年には14件、2017年には18件、2018年には9件も結ばれていた姉妹都市など日台の都市間提携が今年は本日まで1件も結ばれていないという異常事態を迎えている。5県産品の輸入禁止措置はすでに日台の友好関係にヒビを入れていたのだ。

この異常事態は、沼田代表がコメントしたように5県産品の輸入禁止措置こそ「日台間に横たわっている問題の中で、私達にとって最重要の問題」であることを証している。つまり、中国国民党や中国が目論む日台離間策にまんまと引っ掛かったことを意味している。中国国民党は今回の税則改正案についても、域内産業や農家の保護を理由に反対したという。

蔡英文政権は今からでも遅くはない。日本の信頼を取り戻すべく、知恵を絞り、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県という地域を基準とするのではなく、科学的な根拠に基づいた国際的な基準にのっとった措置に切り替えるべきである。


一部農水産物等に対する関税率の引き下げについて

【日本台湾交流協会台北事務所:2019年7月5日】

7月3日、穀類酒・味噌・ホタテ・ナガイモ等を含む15品目にかかる関税率を引き下げる法案が可決されました。先ず関係各位の御努力に感謝し、衷心からの敬意を表したいと思います。今回の関税率の引き下げは、台湾側の自発的な取り組みでありますが、これにより、日台間の経済・貿易関係が更に発展することを期待しています。 

台湾の皆様、私は日本を代表する者として、皆様に私の要望も聞いて欲しいのです。それは、日本産食品に対する台湾の輸入規制措置を早期に撤廃して欲しいということです。勿論、日本産食品の安全性について、台湾の皆様に理解していただけるよう、私達は、引き続き懸命の努力を続けて行くことをお誓いします。今、日台間に横たわっている問題の中で、私達にとって最重要の問題と位置付けているのが、この福島県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県の食品に対する台湾の輸入規制措置なのです。一日も早く撤廃されることを、ここにあらためて切に希望します。そして、この問題が解決される暁には、日台関係全般に明るい光りが差すのです。この点、是非、台湾の皆様の御理解を頂き、問題解決に向け併せ皆様の御支援を頂きたく、宜しくお願い致します。 

2019年7月5日
公益財団法人日本台湾交流協会
台北事務所代表 沼田幹夫