本会は1月29日、台湾の総統選挙において蔡英文総統が再選されたことを受け、「2020緊急政策提言」として「台湾への武力使用反対の国会決議を」を発表しました。下記にご紹介します。

ちなみに、本会は2012年以来、下記の政策提言を発表し、緊急提言は3回目となります。

・2012年「集団的自衛権に関する現行憲法解釈を修正せよ」
・2012年「台湾との自由貿易協定(FTA)を早期に締結せよ」
・2013年「我が国の外交・安全保障政策推進のため『日台関係基本法』を早急に制定せよ」
・2015年「新たな対中戦略の策定を急げ─『サラミ・スライス戦術』で勢力圏の拡大を図る中国」
・2016年「選挙後の台湾にスムーズな政権移譲を望む」[緊急提言(1)]
・2016年「台湾のTPP加盟を早期に実現せよ」[緊急提言(2)]
・2016年「中国の覇権的な拡張に対し南シナ海の合同哨戒を直ちに実施せよ」
・2018年「台湾を日米主催の海洋安全保障訓練に参加させよ」
・2019年「『日台交流基本法』を早急に制定せよ」
・2020年「台湾への武力使用反対の国会決議を」[緊急提言(3)]


日本李登輝友の会「2020緊急政策提言」 台湾への武力使用反対の国会決議を

                         令和2年(2020年)1月29日

                                 会長 渡辺利夫

                                 副会長 加瀬英明 川村純彦 黄文雄 田久保忠衛 辻井正房

1月11日に行われた台湾総統選挙において、蔡英文現総統が817万票という総統選挙史上最高の得票により再選された。

今回の総統選挙は、当選後、蔡英文総統自らが全ての国民に語ったように「自由・民主の国家」と「自由・民主のない国家」が闘った選挙であったと総括出来よう。

昨年の1月2日午前、中国の習近平主席が「台湾同胞に告げる書40周年」の重要演説において、台湾を「一国二制度」で統一しようとする意志を改めて鮮明にした際、蔡英文総統が間髪を入れずその日の午後、台湾は「一国二制度」を決して受け入れることはないと鮮烈に反論したことは記憶に新しい。

「自由と民主」を切に希求する動きは香港にも飛び火し、「一国二制度」の現実に失望した多数の市民による街頭行動という命懸けの闘いを通じて、世界に警鐘を鳴らしている。

台湾の人々も、今回の総統選挙において、中国によるこれまでの様々な圧力や介入に屈することなく、彼らの先人たちが築き上げてきた台湾の「自由と民主」を断固守り抜くという確固たる意思を鮮明にしたと言えよう。

しかしながら、今回の台湾総統選挙の結果を中国の指導部がどのように受け止め、いかなる行動に出るかは、今後、予断を許さない状況となる可能性が高い。

1年前、習近平主席が「台湾同胞」に対して「外部勢力の干渉や台湾独立分子」に「武力の使用を放棄することを約束せず、あらゆる必要な措置を取る選択肢を保有する」と宣言した。中国の統治下にない台湾に対する武力使用の宣言は、台湾の人々に対する不当な恫喝的圧力に他ならない。中国共産党の独裁を外部にまで及ぼそうとする本性の発露である。日本は断じてこれを認めるべきではない。

我々日本国民は、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値観を台湾の人々と共有している。また、日本と台湾とは、まぎれもなく「運命共同体」である。このような立場から、我々は「日台交流基本法(仮称)」を早急に制定すべきことを提言した。我々は、国会がその立法措置について果敢に取り組むことを強く期待している。しかし、残念ながら、その実現については未だ目処が立たない状況である。

このたびの台湾総統選挙の結果、中国の意図する「一国二制度」による台湾の併合に断固たる反対姿勢を貫く蔡英文総統が再選されたことにより、今後、中国が、台湾海峡における軍事的圧力を高めるなど、一層の強硬姿勢を取る危険性がある。

これに対し、わが日本政府はどのように対応しているか。茂木敏充外務大臣は蔡英文総統が再選された直後、「民主的な選挙の円滑な実施」並びに再選されたことに祝意を表しつつ「台湾をめぐる問題については、当事者間の直接の対話により平和的に解決されること、また地域の平和と安定に寄与することを期待します」と発出し、これまでの日本政府の見解を改めて表明した。

我々はこの政府見解を尊重するものであるが、更に日本の姿勢表明として、国民の代表者たる国会が「台湾への武力使用反対決議」を行うことを緊急に提言するものである。具体的には、国会が安倍晋三政権に向けて「中国に対して、台湾への武力使用を放棄するよう求めよ」との決議を行うべきである。