6月12日、日本の高輝度光科学研究センターと理化学研究所は台湾の国家放射光研究センター」(国家同歩幅射研究中心)とオンライン会議を開き、「SPring-8」(スプリング・エイト)における台湾ビームライン契約更新のための覚書(MOU)の調印式を取り行った。
SPring-8の運営者であり施設者である国立研究開発法人理化学研究所のホームページによると、SPring-8とは、兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光施設で、公益財団法人高輝度光科学研究センターが利用者選定業務及び利用者支援業務を行っているという。
この「SPring-8」(スプリング・エイト)」内に、台湾ビームラインと呼ばれる2本の専用ビームラインを建設し、2000年に最初の覚書を交わしたという。2010年に契約を更新し、今回は3回目の契約更新の覚書だそうだ。
日台間ではこのような放射光研究の分野でも手を組んでいたようで、契約更新をお祝いするとともに、下記に「Taiwan Today」の記事をご紹介したい。
NSRRC、日本と「SPring-8」台湾ビームラインの契約を更新
【Taiwan Today:2020年6月15日】
中華民国(台湾)科技部(日本の文科省に類似)所管のシンクロトロン研究機関である国家同歩輻射研究中心(NSRRC)は12日、日本の公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)、理化学研究所(RIKEN)とオンライン会議を開き、「SPring-8」台湾ビームライン契約更新のための調印式を行った。
NSRRCは2000年より、高輝度光科学研究センターとの協力を展開している。当時の行政院国家科学委員会(現在の科技部)より3億5,000万台湾元(約12.6億日本円)の予算を取り付け、日本の兵庫県にある大型放射光施設「SPring-8(スプリングエイト)」内に、台湾ビームラインと呼ばれる2本の専用ビームライン「BL12XU(NSRRC ID)」と「BL12B2(NSRRC BM)」を建設し、最初のMOUを調印した。その10年後となる2010年に2回目のMOUを締結し、台湾ビームラインの契約更新を行った。今回の契約更新は3度目のMOU締結となる。
2000年のMOUは、台湾と日本にとって科学技術分野で最初となる大型協力プロジェクトだった。兵庫県にある「SPring-8」は当時世界最大の放射光施設であり、日本側がその最新の加速器に、NSRRCが設計したビームラインを建設することに同意したことは、台湾の放射光技術がすでに世界トップレベルに達していることを証明し、且つ台湾と日本の科学交流の新たなマイルストーンとなるものでもあった。
NSRRCは1993年、台湾北部・新竹に低エネルギーの放射光施設「台湾光源(Taiwan Light Source、略称TLS)」を設置。2016年には中エネルギーの「台湾光子源(Taiwan Photon Source、略称TPS)」の供用を開始した。いずれも赤外線、真空紫外線、X線などの研究に適している。一方、1997年に日本で稼働を開始した「SPring-8」は高エネルギーを電子に与えて放射光源を発生させるものでX線領域の研究に向いている。こうして3つの放射光施設は、アジア地域において補完関係を構成することになった。
NSRRCによるとこの20年間、最先端材料やバイオ科学などの領域で、台湾と日本が台湾ビームラインを使った研究成果をまとめた、いわゆる「SCI論文」は550本以上に達している。NSRRCのみならず、台湾の高等教育機関の学生や研究機関の研究者など毎年延べ200人ほどが日本を訪れ、この2本のビームラインを使った研究を行っている。
科技部によると、最先端の光源・利用テクノロジー分野における協力を通し、台湾と日本の技術協力はますます拡大し、規模を深めている。双方は半導体、グリーンエネルギー関連材料、ウイルス関連、医薬品の開発に至るまで、基礎科学領域の協力によってイノベーティブで応用性のある科学研究を活性化させ、且つ共同で「高エネルギー同調X線先端実験技術」の研究・開発を進めている。なお、「SPring-8」は2026年にアップグレードが予定されており、これによって世界最高輝度、最高エネルギーの光源を発生する放射光施設となる見込み。