覚書に署名したAITのラーソン執行理事(左)と蕭美琴駐米代表(駐美國台北經濟文化代表處のHPより)

中国が2月1日に施行した「海警法」について、3月16日にオースティン米国防長官と防衛省で会談した岸信夫・防衛大臣は「中国海警法による緊張を高める行動について断じて受け入れられない旨、両国で深刻な懸念を表明。台湾海峡の平和と安定の重要性について認識を共有しました」(3月16日のツイッター)と述べた。

防衛省のホームページでも「中国海警法については、曖昧な適用海域や武器使用権限等、国際法との整合性の観点から問題がある規定を含んでいる」として、曖昧な管轄海域などについて解説している。

◆中華人民共和国海警法について

国際法に抵触しかねない中国の海警法施行への危惧は、防衛相会談後の茂木外務大臣とブリンケン国務長官の4者による「日米安全保障協議委員会」(2+2)でも共有されると同時に、台湾海峡の平和と安定の重要性についても認識を共有し、さらに南シナ海についても「中国の不法な海洋権益に関する主張及び活動への反対を改めて表明」した。

日米と同じく「深刻な懸念」を共有する台湾は3月25日、米国と「海岸警備に関する協力覚書」に調印した。バイデン政権誕生後、台湾との間で調印する初めての覚書となる。

これは、米台双方で「海岸警備作業チームを設置し、台湾側は海洋委員会海巡署、アメリカ側は沿岸警備隊が代表を指定して参加し、連携を強化」するとともに「双方が海洋資源の保存やIUU(違法操業・未報告・無規制)の減少、共同海上捜索救助や海洋環境汚染への対応活動への参加といった共通の目的に向け」協力していくという内容だそうで、米国在台湾協会(AIT:American Institute in Taiwan)のイングリッド・ラーソン執行理事と蕭美琴・駐米台北経済文化代表処代表が署名した。

「自由で開かれたインド太平洋」の要衝にあり、南シナ海でも中国の圧力を受けている台湾に対する、バイデン政権の台湾支援の一環であり、ようやくバイデン政権が行動で台湾との関係強化を打ち出した。


台湾、米国と沿岸警備の連携強化で覚書 バイデン政権で初

【中央通信社:2021年3月26日】

米国の対台湾窓口機関、米国在台協会(AIT)は26日、駐米国台北経済文化代表処(大使館に相当)と沿岸警備ワーキンググループの設置に関する覚書を結んだと発表した。米沿岸警備隊と台湾の海洋委員会海巡署(海上保安庁に相当)を通じて意思疎通の向上や協力関係の構築、情報共有などを行う。蘇貞昌(そていしょう)行政院長(首相)は同日、平和を守るためにみなが各方面で協力していると述べ、中国に対し、地域の緊張を高め続けるのはやめるよう呼び掛けた。

台米が覚書を交わすのはバイデン政権発足後初めて。覚書では、双方が海洋資源の保存やIUU(違法操業・未報告・無規制)の減少、共同海上捜索救助や海洋環境汚染への対応活動への参加といった共通の目的に向けた協力関係も確認した。AITのイングリッド・ラーソン執行理事と蕭美琴駐米代表(大使に相当)が25日、署名した。

中国は先月1日、管轄海域内で外国船舶に武力行使することを中国海警局に認めた「海警法」を施行した。これに対し、米国や地域諸国は警戒を強めている。

蘇氏は26日、立法院(国会)出席前に報道陣の取材に答えた。台米の協力覚書が中国海警法への有効的な対抗になるかについて問われると、同法は「周辺国家に大きな緊張や圧力をもたらす」と批判した上で、「共通の理念や価値観に基づいて地域の平和や安定を維持するために、みなが各方面で協力している」と述べた。