11月8日、広島市に本社を置く広島電鉄と台湾の平渓線を運行する国営台湾鉄路(台湾鉄道)は台北駅において、鉄道観光交流の促進や地域振興の推進を目指して「姉妹鉄道」及び「観光提携協定書」を締結した。
広島電鉄は、原爆ドーム前停留場前の原爆ドームと、広電宮島口駅を最寄り駅とする厳島神社の2つの世界遺産を結ぶ宮島線や、日本一長い路線網を誇る路面電車などを運行している。
日本統治時代の1921年に運炭専用鉄道として開業した平渓線は、新北市瑞芳区の三貂嶺駅から同市平渓区の菁桐駅に至る7つの駅を持つ単線。商店街のまん中を列車が通り、沿線には天燈(スカイ・ランタン)の打ち上げで有名な十分駅や「台湾のナイアガラ」と呼ばれる十分瀑布があり、台湾で最も人気のあるローカル線だ。
これで、大井川鐵道と阿里山森林鉄道が「姉妹鉄道」を締結した1986年1月以来、日台の鉄道提携は54件にのぼる(本会調査)。
日本と台湾の間では、自治体同士の提携(都市間提携)や鉄道、学校の提携などが頻繁に行われるようになっている。そればかりではなく、銀行、議会、湖、山、神社、温泉、動物園、博物館、水族館、弁護士会、教育委員会、ゴルフ場、自転車道、マラソン、サッカー、空港、郵便局などの提携もしている。
国交がない日本と台湾は、どうしてこれほど密な関係を結んでいるのだろうと、紹介しながらいつも不思議な感じがしている。単なる「お隣さん」の関係とは片づけられないなにかがあると思わざるを得ない。単なる観光のための誘客とも思われない。提携すると楽しい関係になることを、双方が分かっているような気がしてならない。
日台双方に惹かれ合うなにかが厳然とある。どうも茫漠とではあるが、双方の歴史と文化に起因しているように思われる。それを見極めるためにも、今後も日台の提携を紹介していきたい。
大井川鐵道と阿里山森林鉄道が「姉妹鉄道」を締結した1986年1月以来、今回の広島電鉄と平渓線の「姉妹鉄道」と「観光提携協定」までをまとめた「日台の鉄道提携」はこちら。
下記に、広島電鉄が広報した「お知らせ」と台湾の台湾国際放送の記事をご紹介する。
◆国営台湾鉄路株式会社 平渓線と姉妹鉄道を締結! 乗車券交流を実施します【広島電鉄「お知らせ」:2024年11月8日】
台湾鉄道平渓線と広島電鉄が姉妹鉄道を締結
【台湾国際放送:2024年11月8日】
台湾の在来線、台湾鉄道(台鉄)の平渓線と日本の広島県の広島電鉄が姉妹鉄道協定を締結しました。8日に締結式典が行われました。
台湾鉄道北区営運処の王兆賢・処長は、台湾鉄道の馮輝昇・総経理(社長)の立会いのもと、広島電鉄の仮井康裕・社長と台北駅にて姉妹鉄道の協定に署名しました。
仮井氏は、広島電鉄の前進は1910年に設立された広島電鉄軌道であり、日本最大の路線網とその輸送人員を誇る。国際都市・広島と世界遺産の「宮島」を結んでおり、日本を訪れる観光客の1割から2割は広島県を訪れていると述べたほか、台湾鉄道の平渓線は美しい景観と多彩な体験で知られており、日本の観光客にも愛されている。この締結を通じて日台の観光客をつなぐ架け橋になることを期待していると語りました。
馮氏は、平渓線は台湾で最も人気のあるローカル線で、1921年に開通して以来、103年間運行され、年間利用客数はのべ100万人以上に達している。また、平渓線は「スカイランタンフェスティバル」で世界的にも有名で、国際雑誌でも「一生に一度は行きたい世界の14フェスティバル」の一つに選ばれている。9つの駅は、ノスタルジックな雰囲気に満ちており、外国人観光客にも人気で、今回の提携により、環境に優しく低炭素な鉄道観光の発展が促進されることを願っていると述べました。
馮氏は、今回の姉妹鉄道の締結は、台湾鉄道にとって33社目となる。このような締結を通じて、乗車券や記念品、旅行プランなどを総合的に企画し、台湾の鉄道観光の発展が促進されている。また、台湾の人々が鉄道をテーマにした観光で日本を訪れることも、より便利となっていると述べました。
さらに馮氏は、台湾鉄道が2019年から鉄道観光を推進して以来、収益は5,000万台湾元から1億5,000万台湾元(日本円でおよそ2億4,000万円から7億1,300万円)に、利用者数は延べ8万7000人から23万人に成長しており、鉄道観光の発展には大きな魅力と可能性があると指摘しました。
双方は百年の歴史、そして豊かな民俗文化を持つ山間鉄道として、台湾と日本の旅客をつなぐ架け橋となることを期待するとともに、観光鉄道を共に推進していくことは、頼清徳・総統が掲げるネットゼロ、そして持続可能な発展の目標に沿うもので、貢献することができるとしています。