今年は、牡丹社事件から150年の節目の年。3月に早稲田大学において国際シンポジウム「台湾出兵・牡丹社事件150年 交錯する日台の視座」が開催されたのを手始めに、5月には事件により大規模な戦闘が起きた屏東県牡丹郷の石門古戦場において史跡碑の除幕式が行われ、日本台湾交流協会高雄事務所の奥正史所長や沖縄県宮古島市の大城裕子教育長、同市議会議員らも出席した。
54名が台湾原住民によって殺害された宮古市から犠牲者の玄孫(やしゃご)や教育長などが「牡丹社事件150年記念行事」に参加したという記事を読み、宮古市と牡丹郷の提携も夢ではないと思いながら、14年前、屏東県牡丹郷高士村で牡丹社事件の詳細を教えていただいた高士村生まれで牡丹郷の郷長だった華阿財さん(パイワン族名:バジェルク・タリグ)の温和な、しかし力のこもった目を思い出していた。
叔父も夫人の叔父も大東亜戦争では軍属として出征し、南方で亡くなり、いまは靖國神社に祀られている。高士村でも靖國神社に参拝したときも、華阿財さんがしきりに説いていたのは「和解」だった。宮古島の犠牲者後裔との和解だった。
11月6日、沖縄県宮古島市と屏東県牡丹郷は「交流協定に関する覚書」を締結した。宮古市で行われた覚書署名式には宮古島市の座喜味一幸(ざきみ・かずゆき)市長と牡丹郷の潘壮志・郷長が臨んだという。
牡丹社事件は日本と台湾の出会い頭に起きた不幸な事件ではあった。宮古島市と牡丹郷が150年の時を経て和解に向かうきっかけとなり得る歴史的な都市間提携と言ってよい。これを機に、宮古島の犠牲者後裔との和解が本格的に進み、華阿財さんの願いがかなうことを切に願いたい。
この提携で、1979年10月の青森県大間町と雲林県虎尾鎮の「姉妹町」締結からは147件目(本会調査)となり、今年に入って新たに結ばれた提携数も17件となる。
1)1月22日 鹿児島県と屏東県が「青少年や芸術・文化、観光、経済などの分野で交流を促進するMOU」を締結
2)1月31日 鹿児島県伊佐市と台湾の花蓮市が「友好交流協定」を締結
3)2月27日 熊本市と高雄市が「スタートアップ関連での交流促進覚書」を締結
4)2月27日 熊本県小国町と台北市士林区が「友好交流協力に関する覚書」を締結
5)4月15日 熊本県上天草市と新北市瑞芳区が「友好交流協定」締結
6)4月29日 長崎県平戸市と台南市が「友好交流協定」を締結
7)5月06日 茨城県那珂市と台南市が「友好交流協定」を締結
8)6月20日 北海道雨竜郡沼田町と花蓮県瑞穂郷が「友好交流協定」を締結
9)6月26日 大分県九重町と花蓮県豊浜郷が「連携・協力に関する覚書」を締結
10)8月19日 北海道茅部郡森町と彰化市が「友好交流協定」を締結
11)8月28日 北海道富良野市と台南市が「友好交流協定」を締結
12)10月1日 北海道美唄市と花蓮県富里郷が「友好交流協定」を締結
13)10月5日 秋田県秋田市と台南市が「交流協力に関する合意書」を締結
14)10月11日 愛媛県松山市と台北市が「友好交流都市協定」を締結
15)10月18日 茨城県小美玉市と新北市淡水区が「友好交流覚書」を締結
16)10月22日 愛媛県砥部町と新北市鶯歌区が「交流促進に関する覚書」締結
17)11月06日 沖縄県宮古島市と屏東県牡丹郷が「交流協定に関する覚書」を締結
台湾の牡丹郷と宮古島市、「交流覚書」締結 「牡丹社事件」乗り越え協力強化へ
【中央通信社:2024年11月7日】
南部・屏東県牡丹郷と沖縄県宮古島市は6日、交流協定に関する覚書を締結した。台湾南東部に漂着した宮古島民54人が台湾原住民(先住民)族パイワン族に殺害されたのを受け、1874年に日本軍が台湾南部に侵攻し、恒春半島一帯で約半年間にわたり占領体制を敷いた牡丹社事件の悲劇を乗り越え、教育・文化交流、観光活動、産業振興の促進を図る。
屏東県政府原住民処などによると、牡丹郷の潘壮志郷長やクスクス(高士)集落に暮らす原住民らの代表団は8日まで宮古島を訪問している。7日には牡丹社事件の和解を記念して牡丹郷から贈られ、島内のカママ嶺公園に設置された「愛と和平記念碑」での祈願式にも参加したという。
同処は、歴史的事件の再認識や相互理解を通じて交流を図るとし、双方のさらなる発展に期待を寄せた。