昨2月17日の早朝5時、日本経済新聞のインターネット版が「戸籍の国籍欄『台湾』表記を可能に 法務省、5月から」という見出しを掲げ、「法務省は5月から戸籍の国籍欄に地域名を表記することを可能にし、事実上『台湾』の記載に道を開く。関連省令を改正する。これまでは原則国名のみを認め、台湾の出身者は「中国」と記していた。地域の出身者のアイデンティティーに配慮する」との記事を掲載した。

この報道が、5月施行を予定して法務省が進めている「戸籍法施行規則の一部を改正する省令」について報じた第一報だった。

この報道を受け、台湾の「中央通信社」と「自由時報」が7時台と8時台に後追い記事を出し、日本は産経新聞と共同通信が夕方に報道した。

本会は、2010年(平成22年)11月からこの台湾出身者の戸籍問題の解決に取り組んできた。

戸籍問題とはなにかというと、台湾出身者が日本人と結婚したり日本に帰化する場合、または日本人の養子となる場合など、その身分に変動があった場合、戸籍における国籍や出生地は「台湾」ではなく、「中国」または「中国台湾省」「中華人民共和国」と表記されることを指す。

そこで、在留カードや外国人住民票と同様に「国籍・地域」とし、「中国」から「台湾」に改めるよう、その原因を為す昭和39年(1964年)6月19日に出された「法務省民事局長通達」の出し直しを求め、シンポジウムや街頭署名活動を通じて理解を求めるとともに、要望書と署名を法務大臣へ提出してきた。

国会議員の協力を得て外務委員会での質疑や政府へ「質問主意書」を提出していただき、石川県議会や宮城県議会、柏崎市議会、鎌倉市議会、伊勢崎市議会では「台湾出身者の戸籍表記是正を求める意見書」を可決していただいた。

また、在日台湾人の方々には、日本での結婚や帰化ばかりでなく、実害を被った多くの事例を提示していただいた。

例えば、日本で事故死した家族を台湾で埋葬しようと思って遺体を台湾に運ぶと、日本の区役所が発行した戸籍謄本と死亡届の記載事項証明書に死者の国籍が「中国」となっていたため、死亡届も埋葬もできず、もう一度台湾から日本へ行って区役所に書類の訂正などの再申請を行った事例や、日本の戸籍謄本における国籍欄が「中華人民共和国」と表示されていたため、台湾の戸政事務所で結婚の登録ができなかった事例などだ。

昨日からの報道を見て、日本の戸籍で「台湾」と表記できるようになることを一番喜んでいるのは、実害を被った台湾の人々であり、台湾人にもかかわらず中国人とみなされて台湾人としての尊厳を傷つけられた台湾の人々だろう。

もちろん、日本人としても戸籍が正しく表記されることは実に喜ばしいと思っている方も少なくないはずだ。在日台湾人の方々とともに戸籍問題の解決を目指して活動してきた本会も、15年かかって解決に導けるようになったことに深い感慨を覚えている。

本日の産経新聞は1面トップでこの戸籍のことを報じている。下記に紹介したい。中国からの反発も出ているが、これは純然たる日本の内政に関わることだ。日中間の約束にしたがって内政干渉をただちに止めるよう求めるとともに、省令が施行される5月を静かに待ちたい。


戸籍の国籍蘭「台湾」可能 省令改正 5月から地域名記載

【産経新聞:2025年2月18日】

法務省は17日、日本人が外国人と結婚した場合の戸籍上の表記に関し、5月から国籍欄に地域名を記載できるよう省令改正すると明らかにした。これまでは国名が原則で、台湾出身者も「中国」との記載だった。地域名の表記を認める住民票や在留カードとの統一を図るとともに、アイデンティティーに配慮した形だ。

台湾当局が謝意を示す一方、中国は「台湾問題は中国の内政だ」と反発した。

法務省によると、現行の戸籍では外国人と婚姻した場合、配偶者の氏名などとともに「国籍」の記載欄を設けている。帰化した際も帰化前の国籍を記す。

改正省令ではこれを「国籍・地域」に変更し、台湾との表記を可能とする。施行前に結婚や帰化した台湾出身者も、申し出があれば変更を認める方針。

婚姻や離婚時には日本の法律だけでなく、相手の国・地域の法規定も考慮されるケースもあるため、表記の明確化で混乱を防ぐ狙いもある。